研究課題/領域番号 |
16H05052
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
仲井 まどか 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60302907)
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研究分担者 |
佐藤 令一 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30235428)
高務 淳 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80399378)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | チャノコカクモンハマキ / バキュロウイルス / 核多角体病ウイルス / 顆粒病ウイルス / 抵抗性 |
研究実績の概要 |
チャノコカクモンハマキ野外個体群に対してバキュロウイルス科に属する昆虫病原ウイルスであるAdoxophyes honmai NPV(AdhoNPV)を用いた選抜を行い、人為的にAdhoNPVに抵抗性の系統(R系統)を作出した。継代飼育3世代から158世代まで毎世代選抜を行ったR系統は、全く選抜してない(感受性の)S系統に対して1齢幼虫にAdhoNPVを接種した場合は40万倍以上、5齢接種では10万倍以上の抵抗性比を示す。今年度は、21世代で選抜をやめた系統(RN21系統)について、一次感染(中腸への感染)におけるウイルス粒子の中腸上皮細胞への結合と融合能に加えて、ウイルス遺伝子の発現量について定量PCRにより明らかにした。また、抵抗性のメカニズムについてアポトーシスの関連がないかどうかTUNEL法によりDNAの断片化を検出した。さらに、顆粒病ウイルス(Adoxophyes orana GV: AdhoGV)による交差抵抗性のメカニズムについても調査し、ウイルス遺伝子の発現量やウイルス粒子の結合量融合量の比較によりNPVとは異なる抵抗性メカニズムが存在することを明らかにした。さらに、R系統とS系統を用いたRNA-seq解析を行い、NPV接種により発現上昇あるいは減少する遺伝子、すなわち抵抗性候補遺伝子の絞り込みを行った。先進ゲノムプロジェクトに採択されたため、ddRAD-seq解析に取り組んだ。まず、ddRAD-seqのプロトコールを作製し、S系統とR系統の交配させて次世代と戻し交雑を行い供試昆虫からDNA抽出を行った。抽出したDNAを制限酵素処理し、切断箇所付近の配列をアダプターに接続したライブラリーを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年に引き続き、ウイルスによる選抜を途中で止めたRN21系統における抵抗性機構についてのさらに新たな知見が得られた。また、GVについての交差抵抗性のメカニズムに関する知見も得られた。これらのR系統、RN21系統、S系統の比較により、複数のNPV抵抗性機構を解明する材料が得られたことと、R系統を用いたバキュロウイルス(NPVとGV)に対する抵抗性機構の比較研究に繋がる材料が得られたことが確かめられた。また、ddRAD-seq解析については、R系統とS系統の1個体づつを交配させ、さらに次世代とそれぞれの系統を戻し交雑個体にそれぞれGVとNPVを接種して得られた個体からDNAを抽出して供試した。ライブラリーはすべて手作りで、プロトコールの作製から取り組んだが、概ね今年度中にライブラリー作製が完了した。この情報とDNA-seq等の情報を合わせて調べることにより、抵抗性関連遺伝子の絞り込みが可能になると考えられる。このように今後の研究の進展に有意義な進展が見られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1. GV交差抵抗性メカニズムの解明 2. NPV接種により発現変動する遺伝子の定量PCRによる確認 3. ddRad-seq解析による抵抗性関連遺伝子の探索
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