研究課題
外界からの感覚情報に対して適切な行動によって反応することは、動物の生存や種の維持に重要である。昆虫の性フェロモンは、入力(感覚情報)と出力(性行動)が明確に対応している。本研究者はこれまでに 神経活動のマーカー遺伝子Hr38を昆虫で初めて単離し、カイコガ・ショウジョウバエの脳で性フェロモンに反応した細胞の分布を明らかにしてきた。本研究は、この発見を基盤として新規に開発した活動依存的な神経回路ラベル法を駆使し、昆虫の脳高次領域において性フェロモン情報を処理する神経回路の可視化・機能解析を行うものである。これにより、外界の様々な感覚情報を最終的な行動発現にどのように結びつけているのかといった、脳高次領域における情報処理の神経機構を解明することを目的としている。本年度は、CRISPR/Cas9を用い、Hr38遺伝子座にattP配列ノックインしたカイコガ系統を作出した。この系統にattB配列を持ったGAL4発現ベクターをインテグラーゼと共にインジェクションし、Hr38-GAL4カイコガ系統の樹立を試みた。また同様に性特異的な神経回路がdsx遺伝子によって構築される可能性を見出したので、dsx遺伝子座にattP配列ノックインした系統を作出した。Hr38と同様にGAL4発現ベクターをインテグラーゼと共にインジェクションし、dsx-GAL4系統の樹立を試みた。また、ReaChRやCsChrimsonといった赤色光で神経活動を操作できるカイコガを作出し、その有用性の検討を行った。ショウジョウバエを用いた研究においては、論文投稿し、採択に求められたリバイズ実験を行った。性行動に伴って活動依存的にラベルされた神経回路を、光遺伝学的手法によって再活性化することが出来る手法を確立し、最終的にPNAS誌より出版した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 116(12) ページ: 5715-5720
10.1073/pnas.1814628116.
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/65392
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-03/ku-nmf031319.php