研究課題
湛水水田土壌表層の酸素濃度を24時間にわたって観測した。土壌表層の酸素濃度は、夏期日中最高1,600μMにまで上昇した。日中の土壌酸素濃度は光合成有効放射(PAR)が1,000 μE m-2 s-1を下回る夕刻を過ぎると急速に低下し、日中溶存酸素濃度のピークが観察された層位が夜間には無酸素状態となった。夜明け時にはPARが150 μE m-2 s-1程度に上昇した時点で急激な酸素濃度の上昇が認められ、その層位は日中のピークよりも深かった。このことから、水田土壌中では光量や栄養塩濃度に対する異なる応答性を持った複数のグループによる光合成が行われていると推察された。溶存酸素濃度の昼夜変動の程度は土壌によって異なり、土壌の有機物量あるいは地力窒素の違いがその要因になっているのではないかと推察した。一方で、土壌RNAに基づく真正細菌、メタン生成古細菌および真核微生物の各群集構造は、昼夜で差は認められなかった。絶対好気性のメタン酸化細菌の土壌中での酸化活性におよぼす酸素濃度の変動の影響を培養実験で検証した。好気条件で活発にメタン酸化が起こっている水田土壌をメタンのない状態で好気的あるいは嫌気的に一定期間保存した後に再び好気条件でメタン酸化活性を測定したところ、嫌気条件では高いメタン酸化活性を維持していたのに対し、好気条件では保存期間に応じて活性が低下した。また嫌気状態でメタンを添加して一定期間保存すると保存期間中にメタン酸化は観察されなかったものの、好気条件に転じたときのメタン酸化の開始が早くなった。一方で、気相の酸素濃度が100%のときのメタン酸化活性は21%(大気レベル)のときと比べて明らかにメタン酸化活性が低下していた。以上のことから、酸素レベルの変化がメタン酸化の活性に影響を与えること、嫌気条件は絶対好気性のメタン酸化細菌の活性の維持に寄与することが示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Int. J. Syst. Evol. Microbiol.
巻: 68 ページ: 2587-2592
doi:10.1099/ijsem.0.002882