研究課題/領域番号 |
16H05057
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
石橋 弘志 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90403857)
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研究分担者 |
有薗 幸司 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (70128148)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境汚染物質 / 核内受容体 / 野生生物 / リスク評価 / 生態系保全 |
研究実績の概要 |
残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)に関するストックホルム条約において、新たなPOPsとして追加された臭素系難燃剤(Brominated Flame Retardants: BFRs)や有機フッ素化合物(Perfluoroalkyl Substances: PFASs)に対する学術的・社会的関心が高まっている。これらnew POPsによる環境汚染の実態や毒性影響については依然として不明な点が多い。また、実験動物では、new POPsなどの環境汚染物質による毒性影響(作用濃度)において、系統差・種間差などが存在することが知られている。本申請課題では、実験動物に加え、生態学的に重要視されている野生生物を対象として、脂質代謝に関与するペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARα)シグナル伝達経路に対するnew POPsの比較生物学的リスク評価を行うことを目的としている。 平成30年度は、PPARα-リガンド分子間相互作用において、より精度の高いインシリコアッセイ系を構築するため、従来から知られているPPARαリガンド結合ポケット(PPARα 1st LBP)に加え、近年発見された第2のPPARαリガンド結合ポケット(PPARα 2nd LBP)について、PFASsとのドッキングシュミレーション解析を行い、PPARαリガンド結合領域(LBD)の組換えタンパク質に対するPFASsのインビトロ競合結合試験の結果と比較した。その結果、ヒト(h)およびバイカルアザラシ(bs)のPPARα 1st/2nd LBPsに対するPFASsの結合親和性が初めて明らかになった。また、hおよびbsPPARα 1st/2nd LBPsに対するPFASsの異なる結合親和性には、PPARα 1st/2nd LBPsの体積や水素結合相互作用に関与するアミノ酸、PFASsのフッ素化された炭素数(分子量)や疎水性などの関与が示唆された。さらに、インビトロ競合結合試験におけるPFASs結合強度とインシリコ評価系の結果との間で有意な相関関係がみられ、インシリコ評価系の有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、従来から知られているPPARαリガンド結合ポケット(PPARα 1st LBP)に加え、近年発見された第2のPPARαリガンド結合ポケット(PPARα 2nd LBP)を対象に、PFASsとのドッキングシュミレーション解析を行い、PPARα 1st/2nd LBPsに対するPFASsの結合親和性を初めて明らかにした。また、hおよびbsPPARα 1st/2nd LBPsに対するPFASsの異なる結合親和性には、両生物種のPPARα 1st/2nd LBPの体積や水素結合相互作用に関与するアミノ酸、PFASsのフッ素化された炭素数(分子量)や疎水性などが関与すると考えられた。さらに、PPARαリガンド結合領域(LBD)の組換えタンパク質に対するPFASsのインビトロ競合結合試験とインシリコ評価系の結果との比較から、両者の間に有意な相関関係がみられ、1stおよび2nd PPARα LBP―リガンド分子間相互作用を分子レベルで評価するためのインシリコ解析系を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、多種多様な生物種の各PPARαアッセイ系を用いてnew POPsの評価を行い、各生物種間でPPARαに影響するnew POPsのプロファイリングをする。また、最も活性の強いnew POPsに対する相対活性 (REP値) を各生物種のPPARαで算出する。このREP値と各生物種におけるnew POPs蓄積量等を比較することで、生物種に影響するnew POPsのリストを生物種別に作成し、PPARαシグナル伝達撹乱を指標としたハイリスクアニマルの予測・把握を試み、さらには生態リスク評価に繋げる。
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