新たな残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants: POPs)である有機フッ素化合物(Perfluoroalkyl Substances: PFASs)や臭素系難燃剤(Brominated Flame Retardants: BFRs)による環境汚染の実態や毒性影響については不明な点が多く、これらnew POPsに対する学術的・社会的関心が高まっている。本申請課題では、脂質代謝等に関与するペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARα)シグナル伝達経路に対するnew POPsの比較生物学的リスク評価を行うことを目的としている。 哺乳類のPPARαリガンド結合領域には、従来から知られているPPARαリガンド結合ポケット(PPARα 1st LBP)に加え、第2のPPARαリガンド結合ポケット(PPARα 2nd LBPの存在が示唆されている。昨年度までの研究により、ヒトおよび水棲哺乳類のPPARα 1st LBPおよびPPARα 2nd LBPに対する短鎖および長鎖のPFASsの結合親和性をインビトロ/インシリコアッセイ系により初めて明らかにした。そこで本年度は、魚類(ゼブラフィッシュ、メダカ、コイ科魚類)のPPARα 1st LBPおよびPPARα 2nd LBPに対するPFOA・PFOSを含めた短鎖および長鎖のPFASsとの結合親和性を検討した。その結果、PPARα 1st LBPおよびPPARα 2nd LBPに対するPFASsの結合親和性は、ゼブラフィッシュとコイ科魚類ではPPARα 1st LBPに、メダカではPPARα 2nd LBPに対して強い結合親和性を示す傾向にあった。また、これら結合親和性の違いには、PPARα 1st LBPあるいはPPARα 2nd LBPとPFASsの分子間相互作用に関与するLBPのアミノ酸の種類や、PFASsの炭素鎖数・側鎖の構造などが関与すると考えられた。 以上のことから、哺乳類に加え、魚類のPPARα 1st LBPおよびPPARα 2nd LBPに対するPFASsの結合親和性ポテンシャルを本研究で初めて明らかにした。
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