本研究課題では、これまでに温室効果ガスの1つである一酸化窒素が、施肥や降雨後の土壌からではなく収穫前後に圃場に残された作物体自体(作物残さ)から直接発生していることを突き止めたことを受け、この一酸化窒素の発生は脱窒によるものと仮説を立てて、作物体を起点とした窒素代謝経路の全貌を明らかにすることを目的として研究を実行した。 1.分離源から近縁な脱窒菌を複数分離し、これらのゲノムを全て決定し、ゲノム上の脱窒代謝遺伝子の構成を比較した。その結果、分類的に非常に近いこれらの脱窒菌でもその代謝に関する遺伝子の分布は大きく異なり、染色体上に全ての遺伝子をコードしているものもあれば染色体とプラスミドに遺伝子が分散してコードしているものもいた。 2.これまでにメタボローム解析やトランスクリプトーム解析から作物体に含まれる成分が脱窒に利用されることが示唆されたことから、それらの化合物1つ1つが本当に脱窒に利用されているかを培養実験により調べた。これにより、電子供与体を8種以上特定し、またこれらの電子供与体を同時に利用して脱窒が駆動していることが考えられた。 3.一方で分離した脱窒菌の野外における分布は不明であった。そのため土壌と作物体を用いてアンプリコンシーケンス解析を行い、分離菌した脱窒菌は作物体(キャベツ)の栽培期間中には小さな集団として存在するが葉が老化する収穫時期にその集団を大きくすることを示した。
|