研究課題/領域番号 |
16H05060
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村上 暁信 筑波大学, システム情報系, 教授 (10313016)
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研究分担者 |
中大窪 千晶 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30515143)
淺輪 貴史 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (50361796)
有田 智一 筑波大学, システム情報系, 教授 (90344861)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 緑地計画 / 緑化制度 / ヒートアイランド |
研究実績の概要 |
本研究は,質の高い緑の計画的整備手法という課題に対して,「機能発揮は緑化場所の環境条件により異なる」「環境条件は将来的に変化し得る」という二つの実在市街地の特性が議論深化の最大の障害であると位置づけ,この障害を数値シミュレーションの活用と,場所の類型化によって解決し,計画手法の構築を目指している。平成28年度は,制度設計,デザイン手法,運用方法の検討に必要となる,各種データの整備と国内外の関連事例についての情報収集に取り組んだ。 さらに基礎的分析として,A) 緑化関連制度及び運用状況の整理,B) 緑のヒートアイランド緩和効果の分類,C) 周辺環境変化が効果発揮に与える影響の分析,の三点を実施した。 A)については,民有地緑化誘導政策について従来全国で行われてきた仕様書型基準(緑化率等)による誘導の実態と課題を明らかにした上で,この課題を補うため柔軟な協議によって緑量だけでなく事業毎の地域特性等を踏まえた個別最適解へと誘導する協議調整プロセスを導入した東京都の事例を検証した。これにより,仕様書型基準のクリアが前提であるために協議調整プロセスのメリットが損なわれていること等を明らかにした。 B)C)については,日比谷地区4haを対象に,戦前から現在までの空間形態と構成材料を伝熱計算可能な3D-CADモデルで再現し,数値シミュレーションによって各時代の市街地の熱環境の実態,緑のヒートアイランド緩和効果の実態を明らかにした。その結果,戦前の木造密集市街地は現在の高層建築で構成される市街地よりも顕熱負荷が日中は高く,夜間は大幅に下回ること,生活在空間は日中・夜間共に,戦前の市街地の方が熱的快適性が高いこと等を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した計画通りに調査,分析を進めることができた。平成29年度初頭時点において研究成果を投稿準備中であり,おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度整備した制度設計,デザイン手法,運用方法に関するデータを用いて,A)緑化関連制度及び運用状況の整理,B)緑のヒートアイランド緩和効果の分類,C)周辺環境変化が効果発揮に与える影響の分析,の三点に取り組む。 A)「緑化関連制度及び運用状況の整理」については,国内の事例に加えて,海外事例を調査し,制度と運用の課題を整理する。昨年度整理した国内の関連制度と運用状況のデータから,条例をはじめとする緑化制度の特徴とそれを用いた運用,行政と事業者との協議の内容,協議での行政からの指導の特徴を取りまとめる。 B)「緑のヒートアイランド緩和効果の分類」については,昨年度,東京都内の街区を対象として,緑が実際に熱環境改善に貢献しているのかをシミュレーションを用いて評価したが,その結果とA)の分析結果を同時に分析することで,行政から期待された効果が得られたのかについて分析する。事業者と行政担当者へのインタビュー調査,及び改善機能の評価結果から,どのような指導は反映されやすく,どのような指導は反映されにくいのか,反映されにくい内容であってもどこまでは指導しないと効果が発揮されないのか,を分析する。 C)「周辺環境変化が効果発揮に与える影響の分析」については,B)の分析に加えて,緑の環境保全機能が周辺建物の更新等によってどの程度変化してきているのかを把握する。各対象地区の過去の状態を再現し,これまでどのような周辺環境の変化が生じたのかを詳細に分析し,その上で,緑の機能が建物更新等によってどのように増減したかを分析する。
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