研究課題/領域番号 |
16H05061
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
馬場 まゆら (高田まゆら) 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (10466807)
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研究分担者 |
田渕 研 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 上級研究員 (90531244)
大澤 剛士 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (40554332)
吉岡 明良 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 研究員 (80633479)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 斑点米カメムシ類 / 耕作放棄地 / 状態空間モデル / 温暖化 |
研究実績の概要 |
東北6県の病害虫防除所等から提供いただいた斑点米カメムシ2種(アカスジカスミカメとアカヒゲホソミドリカスミカメ)の11年分の発生予察データの電子地図化が完成した。また、これら2種の害虫に影響を与えると考えられる環境要因や気象条件の情報を整理することができた。 上記のデータを使って斑点米カメムシの分布拡大過程を再現した統計モデルやシミュレーションモデルを作成し、アカスジカスミカメの急速な分布拡大には温暖化が関与していることが明らかとなり、またアカスジカスミカメは道路や耕作放棄地を通って分布を拡大していることが示唆された。これらの成果の解説論文を和文誌に掲載した。 上記カメムシ2種が生活史形質に地理的変異を持っているかを確かめるため、東北地方の同緯度地域に位置する離れた2つの地域個体群(岩手県と秋田県)の間で生活史形質を比較した。各地域個体群から2種を採集し、複数の温度区で飼育することで温度と成長速度の関係に個体群間で差があるかを検証した。これらの成果を現在国際誌に投稿している。 また、2000年代前半の時点でアカスジカスミカメが既に広く分布していた宮城県においてアカスジカスミカメの越冬世代と第一世代の密度を1kmメッシュレベルで予測できる状態空間モデルを、ベイズ統計モデリングソフトStanを用いて構築した。その結果、発生予察調査が行われた月の気温はアカスジカスミカメ密度と正の関係が見られたが、係数の信用区間は0をまたぎ、統計的に顕著な効果ではなかった。また、森林面積もアカスジカスミカメの密度と負の関係が見られたが、係数の信用区間は0をまたいだ。今後、他の月や雨量のデータ、他の土地利用データの影響も検討するとともに、どこまで移動分散を考慮できるか確認しながらモデルを改良・拡張していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目的であった斑点米カメムシの急速な分布拡大が温暖化や土地利用の変化から受ける影響を一部明らかにし、さらにそれらの成果についていくつかの国際誌等へ掲載するなどしたことから、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在作成中である土地利用や気象データ等の環境要因からカメムシ個体群の密度等の予測を行うための状態空間モデルの完成を進めると共に、カメムシ2種の飼育実験の成果の国際誌掲載を目指す。また、本科研プロジェクトで得られたこれまでの様々な成果の解説論文を和文誌に投稿する。 状態空間モデルに関しては、可能な限り移動分散を考慮しながら、気象データと土地利用のカメムシ密度への相対的重要性を検討する。予測精度が高いモデルが得られた場合、将来の気候変化や土地利用変化の予測あるいはシナリオを入力してカメムシの分布変化予測をめざす。一方、モデル構築に際して、取得したデータの情報量が十分ではない場合、シミュレーション等によってどの程度の追加データがあればよいかを検討する。
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