一般に植物は積極的な熱産生機構を持たず、その体温は外気温と共に変動するものと考えられているが、興味深いことに、我が国の寒冷地に自生し、早春に花を咲かせるザゼンソウは肉穂花序と呼ばれる花器が特異的に発熱し、その体温を23℃程度に維持できる恒温性を有している。本研究においては、ザゼンソウの体温制御が肉穂花序における代謝反応に関わる化学平衡の平衡点が温度により変動していることを世界ではじめて明らかにすることができた。本研究成果は、生物の表現型が化学平衡の平衡点の変化によって説明できることを意味しており、植物のみなならず、哺乳動物の恒温性の理解にも影響を与えるものである。
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