膵がんは5年生存率が10%未満と最も致死的な難治癌であり、有効な治療法が存在しない。また再発性が高く、標準治療薬である塩酸ゲムシタビン(GEM)で治療しても膵がんの増殖と転移を抑えることができず、しかも投与後まもなくGEM耐性を獲得することが問題となっている。そのためGEM耐性膵がんに対する新たな治療薬の開発が切望されている。こうした中、糖鎖は細胞表層に局在し、癌化に伴い構造が劇的に変化することから、創薬標的として期待される。これまでの研究において、rBC2LCNレクチンと呼ばれるレクチンが膵がんに結合すること、そして薬剤処理によりその反応性が増強されることを見出していた。本年度は、液体クロマトグラフィーと質量分析を用いて2種の膵がんゼノグラフトモデルマウスに発現するN型、及びO型糖鎖の構造を解析した。さらに、膵がんゼノグラフトモデルからrBC2LCN固定化ビーズに結合する糖タンパク質群をエンリッチして、電気泳動後、LCMSを用いてrBC2LCNの糖タンパク質リガンド群を同定した。同定された糖タンパク質候補に対する抗体を用いて、ウエスタンブロット法と免疫染色によりさらなる検証を行った。一方、rBC2LCNに対するウサギポリクローナル抗体を作製し、血中のrBC2LCNを検出するためのサンドイッチELISA法を構築した。また、血中のrBC2LCN抗体を測定するためのELISA法を構築した。さらに、緑膿菌由来毒素に対する抗体を用いて、血中の緑膿菌由来毒素の濃度を測定するためのサンドイッチELISA法を作製した。rBC2LCNもしくはrBC2LCN-PE38をマウスに投与し、血中のrBC2LCN、rBC2LCN-PE38の濃度、及び中和抗体の濃度を測定した。さらに緑膿菌由来毒素を融合させたrBC2LCN-PE38を作製し、膵がん移植マウスモデルに投与することで、抗がん作用を調べるとともに、安全性についての評価を行った。
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