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2017 年度 実績報告書

アレルゲン親和性によるIgE受容体動的多様性とシグナルエディティングの分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 16H05082
研究機関金沢大学

研究代表者

鈴木 亮  金沢大学, 薬学系, 教授 (00344458)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードアレルギー / マスト細胞 / アレルゲン / 親和性 / IgE
研究実績の概要

アレルギー疾患は、患者数が増加の一途をたどっているにもかかわらず、現在においても根治療法が存在しないため、発症機構の解明と新規治療法の確立が急務の課題となっている。アレルギー疾患はマスト細胞上のIgE受容体が、アレルゲン(抗原)によって抗原特異的IgEを介して架橋(クラスター形成)されることによって惹起される。我々は異なる親和性を持つアレルゲンを用いた研究から、アレルゲン親和性がアレルギー反応の「強弱」だけでなく「質的」にも異なる免疫応答を示すこと、すなわちアレルゲンとIgEの親和性がアレルギー疾患に重要な役割を担っていることを明らかにした。しかし、その詳細な分子・細胞レベルでのアレルゲン親和性認識メカニズム、またアレルギー応答における役割については未だ不明な点も多いのが現状である。本研究では、親和性アレルゲンや独自の研究システムを用いた細胞内・細胞間情伝達機構の解析を通して、アレルギー反応におけるアレルゲン親和性の役割を追究した。具体的には以下の項目に大別できる。①NFAT(nuclear factor of activated T cells)とLuciferaseを発現させたマスト細胞を用いた解析により、アレルゲン親和性による転写因子活性化制御機構の追究。②マスト細胞に存在する個々の分泌顆粒の不均質性に関する単一分泌顆粒レベルでの解析とそれらの分泌制御機構の解析。③マスト細胞とアレルゲン親和性依存的な浸潤細胞の相互作用の実体を解明するための生細胞イメージング解析。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、アレルゲン親和性によるシグナル伝達のエディティング機構を明らかにし、多様なアレルギー応答の実体を明らかにしようとするものである。初めにIgE Crosslinking-induced Luciferase Expression(EXiLE)法を用いたアレルゲン親和性による転写調節機構の解析では、様々な条件検討の結果、十分なシグナル検出に成功し、転写因子活性化におけるアレルゲン濃度及び親和性の関係についてその分子メカニズムの一端について明らかにした。NFATはアレルゲンの親和性の違いにより異なるレベルで活性化していることが明らかになった。また、単一顆粒レベルでのマスト細胞分泌顆粒における解析では、これまでin vitroやin vivoのマスト細胞において、個々の分泌顆粒には内包されているケミカルメディエータや分泌機能タンパク質に違いが存在しており、本年度の研究によって新たな複合体を形成するタンパク質についても明らかにできた。現在はこれらタンパク質複合体のアレルゲン親和性依存的な分泌メカニズムについて解析を行っている。また、アレルゲンの親和性特異的に炎症組織に浸潤する細胞とマスト細胞の相互作用の解析では、細胞内カルシウムイオン動態を指標とした細胞間相互作用や相互作用に寄与する可能性がある接着分子など、新たな知見を得た。このように上記のような研究の試みから、マスト細胞の活性化におけるアレルゲン親和性の機能の一端が明らかになった。

今後の研究の推進方策

独自の親和性の異なるアレルゲンや新しい研究システムを用いた解析から、アレルゲン親和性がIgE受容体の活性化、転写調節、そして浸潤細胞の種類など、様々なレベルでアレルギー疾患を制御していることが明らかになっている。本年度は、親和性が制御するマスト細胞の活性化メカニズム及びアレルギー疾患制御機構について、これまでの知見を基盤にその実体の解明を目指す。特に、単一分泌顆粒レベルでの顆粒放出機構や親転写因子によるアレルゲン親和性認識機構、そして細胞間相互作用によるアレルギー疾患調節メカニズムについて詳細な解析を行う。EXiLE法を用いたアレルゲン親和性による転写調節機構の解析を始め、次世代シークエンサーの解析と網羅的な転写因子活性化アレイのデータとの相関を明らかにすることによって、アレルゲン親和性による転写調節機構を明らかにし、アレルギー疾患における慢性化や重篤化の分子メカニズムを解明し新たな研究の展開を図る。また、本研究で明らかになった分泌顆粒不均質性についてさらに詳細に解析を進める。特にアレルゲン親和性がどのように単一分泌顆粒レベルで分泌を制御しているのかその分子メカニズムの実体の解明を目指す。さらに細胞間相互作用の解析では、これまで十分な知見が得られていなかった細胞系とマスト細胞の共存培養システムの確立とそれらを用いた知見の集積を図る。また、すでに確立している実験系についてはこれまで得られた知見を基盤にin vivo研究へ展開する。本年度は、上記の知見を統合することによってアレルゲン親和性によるアレルギー制御機構の実体を解明する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] The Emerging Picture of Mast Cell Activation: The Complex Regulatory Network of High-Affinity Receptor for Immunoglobulin E Signaling2017

    • 著者名/発表者名
      Suzuki R.
    • 雑誌名

      Biol. Pharm. Bull.

      巻: 40 ページ: 1828-1832

    • DOI

      10.1248/bpb.b17-00465

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Visualization of glucagon secretion from pancreatic α cells by bioluminescence video microscopy: identification of secretion sites in the intercellular contact regions.2017

    • 著者名/発表者名
      Yokawa S., Suzuki T., Inouye S., Inoh Y, Suzuki R., Kanamori T., Furuno T., Hirashima N.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 485 ページ: 725-730

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2017.02.114

    • 査読あり
  • [学会発表] 抗原親和性が制御するマスト細胞の炎症性メディエータ選択的分泌機構の解析2018

    • 著者名/発表者名
      草田智之,稲本奨平, 千田知美, 平嶋尚英, 鈴木亮
    • 学会等名
      日本薬学会第138年会
  • [学会発表] IgGとハプテンによる活性化マスト細胞の抑制機構の研究2018

    • 著者名/発表者名
      鈴木瑠理子, 横川慧, 伊納義和, 古野忠秀, 鈴木亮, 平嶋尚英
    • 学会等名
      日本薬学会第138年会
  • [学会発表] マスト細胞の分泌顆粒に局在するCaチャネルOrai-2による細胞内Ca2+濃度制御2018

    • 著者名/発表者名
      服部幸希, 鈴木亮, 望月雄司, 田中正彦, 平嶋尚英
    • 学会等名
      日本薬学会第138年会
  • [学会発表] 発光イメージング法を用いたグルカゴン分泌の可視化解析系の構築2018

    • 著者名/発表者名
      横川慧, 鈴木崇弘, 井上敏, 伊納義和, 鈴木 亮, 金森孝雄, 平嶋尚英, 古野忠秀
    • 学会等名
      日本薬学会第138年会
  • [学会発表] ミトコンドリアの融合と分裂が表皮幹細胞の増殖と分化に及ぼす影響の解析2018

    • 著者名/発表者名
      井上悠, 長谷川靖司, 宮地克真, 山田貴亮, 長谷部祐一, 中田悟,田中正彦, 鈴木亮, 平嶋尚英
    • 学会等名
      日本薬学会第138年会
  • [学会発表] 草田智之, 稲本奨平, 千田知美, 平嶋尚英, 鈴木 亮2017

    • 著者名/発表者名
      マスト細胞における分泌顆粒内炎症性メディエータの不均質性に関する研究
    • 学会等名
      第39回生体膜と薬物の相互作用シンポジウム

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公開日: 2018-12-17  

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