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2016 年度 実績報告書

脂質メディエーター、リゾホスファチジルセリンのリンパ球における新規機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16H05085
研究機関東北大学

研究代表者

青木 淳賢  東北大学, 薬学研究科, 教授 (20250219)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードリゾリン脂質 / リゾホスファチジルセリン / GPCR / B細胞 / 免疫
研究実績の概要

【背景・目的】申請者はこれまで、オーファンGPCRのスクリーニングから、リゾホスファチジルセリン(LysoPS)特異的に応答するGPCRとして、LPS2/P2Y10、LPS2L/A630033H20Rik、LPS3/GPR174を同定した。これら受容体はいずれも免疫系組織に高発現している。本研究では、これらLysoPS受容体の機能を明らかにすることであるが、申請者はこれまでLPS2、LPS3のシングルKOマウスを作製・解析した。しかし、、通常飼育下ではこれらのKOマウスは顕著な表現型を示さない。免疫系組織においてこれら3つの受容体は、いずれも、特に、B細胞に高発現すること、共通してG13に共役する。このことから、3つの受容体が重複した機能を有することが想定された。そこで、本研究では受容体の複数欠損マウスの作製を試み、LysoPS受容体の生体内における機能を解明することを目的とした。
【方法・結果】受容体多重欠損マウスの作製にはCRISPR/Cas9システムを用いた。最終的に、LPS2/2L二重欠損(DKO)およびLPS2/2L/3三重欠損(TKO)マウスを作出した。次に、3つの受容体の発現がともに高いB細胞に着目した。各受容体欠損マウスに、抗原を免疫し、血中抗体価と所属リンパ節の肥大を調べた。その結果、TKOおよびDKOマウスでは野生型マウスと比較し、有意な抗体価の上昇が認められた。一方、LPS2又はLPS3シングルKOマウスでは顕著な差は認められなかった。また、DKOマウスの抗原投与時の所属リンパ節は肥大化し、リンパ球数が増加していた。
【考察】本研究によりLPS2/2Lが、抗原投与時のB細胞の数を負に制御することが示唆された。現在、In vitroにおいて、LysoPSはB細胞の接着を制御することも見出しており、今後の研究で、LysoPSシグナルが細胞接着を抑制的に制御するメカニズムを解析する必要がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで、自己免疫疾患モデル動物としてのFas欠損、MRL-lpr/lprマウスをバックグランドとして、リゾホスファチジルセリン受容体の欠損マウスの機能を解析し、リゾホスファチジルセリンシグナルが免疫系を負に制御することが明らかになってきていた。しかし、通常のマウスにおいては表現系がほとんど得られていなかった。本年度、LPS2/LPS2LのダブルKOマウスLPS2/LPS2L/LPS3のトリプルKOマウスを用いることで、通常のマウスバックグランドの免疫反応におけるリゾホスファチジルセリンシグナルの意義が明らかにすることができた。この成果により、新規リゾホスファチジルセリンの免疫における機能の一端を明確にすることができたため、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。

今後の研究の推進方策

本年度までの研究で、リゾホスファチジルセリンシグナルがB細胞の機能に対して抑制的に作用することが明確となってきた。以下が今後の課題である。
・リゾホスファチジルセリンシグナルがB細胞機能を抑制するメカニズム
・B細胞以外の免疫系細胞(例えば、受容体発言の多いT細胞、NK細胞など)におけるリゾホスファチジルセリンシグナルの機能
・受容体をモジュレートするリガンド(作動薬、拮抗薬)の開発

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Phospholipid localization implies microglial morphology and function via Cdc42 in vitro.2017

    • 著者名/発表者名
      Tokizane K, Konishi H, Makide K, Kawana H, Nakamuta S, Kaibuchi K, Ohwada T, Aoki J, Kiyama H
    • 雑誌名

      Glia

      巻: 65 ページ: 740-755

    • DOI

      10.1002/glia.23123.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Analysis of glycero-lysophospholipids in gastric cancerous ascites.2017

    • 著者名/発表者名
      Emoto S, Kurano M, Kano K, Matsusaki K, Yamashita H, Nishikawa M, Igarashi K, Ikeda H, Aoki J, Kitayama J, Yatomi Y
    • 雑誌名

      J. Lipid Res.

      巻: 58 ページ: 763-771

    • DOI

      doi: 10.1194/jlr.P072090.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Regulation of the lysophosphatidylserine and sphingosine 1-phosphate levels in autologous whole blood by the pre-storage leukocyte reduction2016

    • 著者名/発表者名
      Nagura Y, Tsuno NH, Kano K, Inoue A, Aoki J, Hirowatari Y, Kaneko M, Kurano M, Matsuhashi M, Ohkawa R, Tozuka M, Yatomi Y, Okazaki H
    • 雑誌名

      Transfus Med

      巻: 26 ページ: 365-372

    • DOI

      doi: 10.1111/tme.12326.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Conformational Constraint of the Glycerol Moiety of Lysophosphatidylserine Affords Compounds with Receptor Subtype Selectivity2016

    • 著者名/発表者名
      Jung S, Inoue A, Nakamura S, Kishi T, Uwamizu A, Sayama M, Ikubo M, Otani Y, Kano K, Makide K, Aoki J, Ohwada T.
    • 雑誌名

      J. Med. Chem.

      巻: 59 ページ: 3750-3776

    • DOI

      doi: 10.1021/acs.jmedchem.5b01925.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 新規 LysoPS 受容体の抗体産生における役割2017

    • 著者名/発表者名
      新上雄司、巻出久美子、井上飛鳥、青木淳賢
    • 学会等名
      日本薬学会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス他
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] 急性腹膜炎におけるリゾリン脂質メディエーター LysoPSの変動及び機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      深見郁也、佐藤慧太、根本祥李、巻出久美子、青木淳賢
    • 学会等名
      日本薬学会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス他
    • 年月日
      2017-03-24 – 2017-03-27
  • [学会発表] 新規 LysoPS 受容体の抗体産生における役割2016

    • 著者名/発表者名
      新上雄司、巻出久美子、井上飛鳥、青木淳賢
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス他
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-27
  • [学会発表] 腫瘍免疫におけるリゾホスファチジルセリンの役割2016

    • 著者名/発表者名
      巻出久美子、新上雄司、井上飛鳥、青木淳賢
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス他
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-25
  • [学会発表] リゾホスファチジルセリン受容体LPS1/GPR34に対する強力且つ選択的アゴニストの開発とその応用2016

    • 著者名/発表者名
      上水明治、巻出久美子、中村翔、井上飛鳥、尾谷優子、大和田智彦、青木淳賢
    • 学会等名
      日本生化学会
    • 発表場所
      東北大学川内キャンパス他
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-25
  • [学会発表] 免疫抑制機能を持つ新規リゾリン脂質 メディエーター リゾホスファチジルセリン2016

    • 著者名/発表者名
      青木淳賢
    • 学会等名
      国立国際医療研究センター研究所セミナー
    • 発表場所
      国立国際医療研究センター(東京)
    • 年月日
      2016-07-25 – 2016-07-25
    • 招待講演
  • [学会発表] マスト細胞上のLysoPS受容体探索ツールの開発2016

    • 著者名/発表者名
      岸貴之、佐山美沙、巻出久美子、川名裕己、井上飛鳥、尾谷優子、大和田知彦、青木淳賢
    • 学会等名
      日本脂質生化学会
    • 発表場所
      秋田市にぎわい交流館AU
    • 年月日
      2016-06-09 – 2016-06-10

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公開日: 2018-12-17  

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