研究実績の概要 |
Lysophosphatidylserine(LysoPS)は極性頭部にアミノ酸の一種であるセリン残基を有するリゾリン脂質である。近年、LysoPS特異的に応答する4つのG蛋白質共役型受容体(GPCR)として、LPS1/GPR34、LPS2/P2Y10、LPS2L/A630033H20RIK、LPS3/GPR174が同定され、LysoPSがこれら特異的受容体を介し、生体内で何らかの機能を有することが想定されている。この内、最初に同定されたLPS1はマスト細胞・単球・ミクログリア・樹状細胞に高発現しており、KOマウスを用いた解析から、LPS1がこれら細胞の遊走や活性化等を制御することが明らかにされている。一方、当研究室で同定された3つの新規LysoPS受容体(LPS2, LPS2L, LPS3)は、既知のLPS1とは異なり、T細胞やB細胞といったリンパ球に高発現している。このことから、これら3つの受容体はリンパ球で何らかの機能を有していることが想定されたが、その機能は不明であった。そこで、本研究では、これら3つの受容体がT細胞やB細胞といったリンパ球でどのような機能を有するのか細胞レベル・個体レベルで解明することを目的とした。 本年度は、LPS2, LPS2L, LPS3のトリプルKO(TKO)マウスを用い、LPS2, LPS2L, LPS3が高い発現を示すB細胞に着目し、免疫後のB細胞機能の評価を行った。オバルミンでマウスを免疫し、所属リンパ節の肥大、交代化を評価した結果、TKOマウスでは、所属リンパ節の肥大、オバルミンに対する抗体化が促進していた。また、高親和性の抗体を産生することが知られているGC B cellの増加が顕著であった。以上の結果は、LPS2, LPS2L, LPS3を介するLysoPSシグナルが免疫後のB細胞の機能を負に制御していることをしめしている。
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