研究実績の概要 |
当研究室では、3つのリゾホスファチジルセリン(LysoPS)受容体(LPS2/2L/3)を同定し、その機能解明を世界に先駆けて行なっている。本受容体、特に、LPS2/LPS2Lは、B細胞の発現が高く、KO, DKOマウスでは、抗原投与後のB細胞増殖が亢進したことから、LysoPSはLysoPS受容体を介し、免疫を抑制することが想定された。また、抗原投与後のリンパ節では、パルミチン酸含有LysoPS(LysoPS-16:0)が顕著に増加していた。そこで今年度の研究では、抗原刺激依存的なLysoPS産生系の解明を試みた。 まず、抗原投与後のリンパ節において、LysoPS前駆体であるPS量をLC-MS/MSにより測定した。その結果、LysoPS-16:0の前駆体になりうるPS(PS-32:0、-32:1、-34:0、-34:1)の増加が確認された。また、質量顕微鏡技術を用い、増加した16:0含有PSのリンパ節内の分布を観察したところで、16:0PSはB細胞が活性化している領域に限局して存在していたが。また、脾臓から単離したB細胞を抗CD40抗体とリコンビナントIL-4で活性化した際にも、顕著な16:0含有量PSの増加が観察された。PSはPCやPEを基質とし、それぞれPSS1とPSS2により合成される。PSS1とPSS2をそれぞれHEK293細胞に過剰発現させ、LC-MS/MS解析を行うと、PSS1過剰発現によりPS-32:0、-32:1、-34:0、-34:1とLysoPS-16:0が顕著に増加した。一方、PSS2過剰発現ではこれらの増加は見られなかった。また、リンパ節におけるPSS1発現をin situ hybridizationにより解析した結果、抗原投与後のB細胞領域で高発現することが示された。以上より、抗原刺激依存的なLysoPS-16:0産生にはPSS1の発現亢進によるPS産生亢進が関与すると考えられた。
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