研究課題/領域番号 |
16H05087
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
戸村 道夫 大阪大谷大学, 薬学部, 教授 (30314321)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 臓器間細胞移動 / 腸管 / 腸内環境 / B細胞 / 無菌化 |
研究実績の概要 |
各パイエル板(PP)に対する所属腸間膜リンパ節(MLN)の対応マップの作成について、樹状細胞特異的にKikGRを発現するCD11c-KikGRマウスの各PPを光照射して24時間後に、MLNの各対応する節に移動した赤くマーキングされた樹状細胞のイメージング像を取得した。 腸内環境変化時に、腸管から多臓器に移行する免疫細胞の同定と、臓器間動態情報の取得について、細胞内サイトカイン染色によりIFN-γおよびIL-17を検出し、PPおよび小腸粘膜固有層からリンパ節および脾臓に移行する細胞の頻度を解析した。通常飼育および高脂肪食飼育マウスにおいて、小腸から上行結腸分までの腸管組織の大部分を光照射して細胞をマーキングし、腸管組織から腫瘍および脂肪組織への移行を解析したところ、通常飼育、および高脂肪食飼育マウスのいずれにおいても両組織へは少数のT細胞およびB細胞が移行しているのみであった。 腸管から骨髄へのB細胞移動について、B細胞の各分化サブセットについて解析したが、腸管組織から骨髄へはmature B細胞のみ移行し、mature B細胞の中でもIgM highおよびIgM low細胞で差は認められなかった。 抗生物質投与による無菌化(ABx投与)により、PPや末梢のリンパ組織だけでなく、骨髄細胞も減少した。そこで、PPから取得したB細胞をラベルして移入した所、ABx投与群では、骨髄およびリンパ節、脾臓で移入した細胞は増加していた。この結果はPPが退縮している為であるとともに、ABx投与時にもB細胞の骨髄への移行は障害されていないことがわかった。さらに、骨髄から多臓器に移行する細胞についても減少傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
腸内環境変化時に、腸管から多臓器に移行する免疫細胞の同定と、臓器間動態情報の取得について、論文作成に必要な最終的に必要なn数の確保、時間経過のデータの取得および論文作成が想定よりも遅れている。 腸管臓器から骨髄に移行した細胞の局在解析を、B細胞特異的にKikGRを発現するマウスで進めているが、組織固定によるKikGRの褪色を最小限にする条件について、従来の方法に比べると褪色を抑える方法を見出したが、さらに検討を続けている。 腸内環境変化時の骨髄造血ニッチの遺伝子発現、腸管から骨髄に移行したB細胞のSAGEデータの骨髄造血ニッチの維持に働くケモカイン、サイトカイン産生の解析について、他の解析を重点的に進めていたために遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
腸管組織から全身臓器に移行する免疫細胞について、B細胞、CD4+T細胞およびCD8+T細胞のnaiveおよびmemoryサブセット、Th1, Th17, Tregの移行について、論文作成に必要なn数のデータを取得しまとめる。 今までの検討で腸管の環境変化が、脂肪組織および腫瘍生長抑制に与える影響などの全身の多臓器への影響のメカニズムについて、腸管から脂肪組織および腫瘍に移行する細胞が非常に少なかったこと、また、ABx投与群では骨髄および免疫系組織での免疫細胞の減少と共に、骨髄から多臓器に移行する細胞についても減少傾向が認められたこと、さらにABx由来PP細胞の移入により細胞減少をrescueできる可能性が示された。そこで次年度は、腸内環境変化については抗生物質による無菌化に、そして腸管から骨髄に移行するB細胞に注目して解析を進める。特に以前に取得している、通常食、ABx投与群でのPPから骨髄に移行した腸管から骨髄に移行したB細胞のSAGEデータを基に骨髄造血ニッチの維持に働くケモカイン、サイトカイン産生の解析を重点的に比較解析することで、腸管組織由来B細胞の骨髄造血ニッチ形成に関わる分子の同定を目標に検討を進める。
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