研究課題
コンドロイチン硫酸鎖は、様々な細胞増殖因子や細胞外マトリックス成分と相互作用し、細胞接着、移動、増殖、分化、形態形成といった様々な細胞活動を制御している。本年度は、多様な生理活性を持つナマコ(Apostichopus japonicas)由来のフコシル化コンドロイチン硫酸に着目し、この神経突起伸長促進活性の解析を試みた。まず、A. japonicusから精製したフコシル化コンドロイチン硫酸の構造解析と神経突起伸長活性の評価を行った。次に化学合成したフコシル化コンドロイチン硫酸三糖β-D-GalNAc(4,6-O-disulfate)(1-4)[α-L-fucose (2,4-O-disulfate) (1-3)]-β-D-GlcAを用い、フコシル化コンドロイチン硫酸の神経突起伸長活性と構造との相関を解析した。A. japonicus由来フコシル化コンドロイチン硫酸は、E unit [GlcA-GalNAc(4,6-O-disulfate) ]を主要構成二糖単位にもつコンドロイチン硫酸鎖を基本骨格として、様々なパターンの硫酸化フコース分枝をもつ硫酸化多糖であった。フコシル化コンドロイチン硫酸の神経突起伸長活性は、E unitが比較的少ないにもかかわらず、イカ軟骨由来のコンドロイチン硫酸-Eに匹敵した。さらに化学合成したフコシル化コンドロイチン硫酸三糖は、同じく化学合成したコンドロイチン硫酸-E四糖と同程度の神経突起伸長活性を示した。これらのことから、フコシル化コンドロイチン硫酸中のフコース分枝はコンドロイチン硫酸-E介在性神経突起伸長の活性を相補する働きがあると考えられた。このようなフコシル化コンドロイチン硫酸三糖構造の生理活性とコンドロイチン硫酸-E四糖構造の生理活性との相関は、コンドロイチン硫酸鎖の生理活性の発現機構を包括的に理解する一助となりうると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
フコシル化コンドロイチン硫酸の神経突起伸長活性とコンドロイチン硫酸-Eの神経突起伸長活性との相関を明らかにでき、コンドロイチン硫酸鎖の生理活性の発現機構を解明できたため。
今後は、現在解析中であるコンドロイチン硫酸鎖の構造変化が、乳がん細胞の骨や脳への転移や神経疾患発症にどのように関わるのかを検討し、これらに関わる“疾患糖鎖”を糖鎖構造・生合成の面から明らかにしたい。
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