研究課題
人為的ユビキチン化修飾による細胞機能の制御を詳細に解析するために、LCL161誘導体をIAPリガンドに利用して、従来よりも低濃度でプロテインノックダウン活性を示すSNIPER化合物の開発に成功した。エストロゲン受容体を標的とするLCLベースのSNIPER(ER)-87は、培養細胞では10nM程度で標的タンパク質のユビキチン化と分解を誘導した。またSNIPER(ER) -87はE3リガーゼとしてXIAPを優先的にリクルートし、ヌードマウスに移植したヒト乳がん細胞に対してもプロテインノックダウン活性と抗がん活性を示すことがわかった。同様にLCL161誘導体を利用して、BCR-ABL、BRD4、PDE4を10nM程度で分解する各種SNIPER化合物の開発に成功した。SNIPERによるプロテインノックダウン法で分解誘導可能な標的タンパク質の細胞内局在を明らかにするために、CRABP-IIタンパク質に核移行シグナル、核外排出シグナル、膜結合シグナル、ミトコンドリア移行シグナルを融合して細胞に発現させ、SNIPER処理により局在させたCRABP-IIタンパク質が分解されるかどうかを調べた。その結果、SNIPER(CRABP)-11処理により、これらすべてのCRABP-IIタンパク質の分解が誘導された。細胞質及び細胞膜近傍に局在するCRABP-IIタンパク質の分解にはユビキチンリガーゼとしてIAPが働いていることが確認されたが、核及びミトコンドリアに局在するCRABP-IIタンパク質の分解には、IAP以外のユビキチンリガーゼが分解に関与する事がわかった。
2: おおむね順調に進展している
LCL161誘導体をIAPリガンドに導入する事により、従来と比べて1/1000程度の濃度でプロテインノックダウン活性を示すSNIPER化合物の開発に成功し、in vivoでもその活性を確認した。またSNIPERによるプロテインノックダウン法で、細胞内の様々なコンパートメントに局在するタンパク質を標的として分解誘導できることを明らかにした。
細胞膜タンパク質をSNIPERで人為的にユビキチン化修飾する事によって、細胞膜タンパク質にどのような挙動変化が現れるかを調べる。モデル実験として、CRABP2を融合した細胞膜受容体タンパク質等を細胞に発現させ、SNIPER(CRABP)-11処理による挙動変化を詳細に解析する。また内在性の細胞膜受容体タンパク質を標的とするSNIPERを開発し、標的タンパク質に及ぼす影響を解析する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Mol pharmacol
巻: 91 ページ: 159-166
10.1124/mol.116.105569
J Biol Chem
巻: 292 ページ: 4556-4570
10.1074/jbc.M116.768853
Cancer Sci
巻: 108 ページ: in press
10.1111/cas.13198
Methods Mol Biol
巻: 1366 ページ: 549-560
10.1007/978-1-4939-3127-9_42
Curr Cancer Drug Targets
巻: 16 ページ: 136-146
Bioorg Med Chem Lett
巻: 26 ページ: 4865-4869
10.1016/j.bmcl.2016.09.041
http://www.nihs.go.jp/mtgt/research.html