研究課題
適度な運動が健康寿命を延ばすことが科学的に実証され、その医療応用が近年注目されている。しかし、患者の多くは加齢や症状の重篤さにより、通常歩行すら難しいのが現実である。申請者は最近、末梢循環障害や慢性心不全の誘導分子としてこれまで見出してきた創薬標的分子(TRPC3/6チャネルとプリン作動性P2Y6受容体)が、病的な運動(持続的な伸展や硬さ)刺激を感知・受容するセンサー分子としても働くことを新たに見出した。本研究では、運動負荷の受容・応答と上記メカノ作動性分子との関係を個体レベルで明らかにし、そのシグナル制御機構を基に、上記メカノ作動性分子を化学的に操縦する方法を構築することで、運動を模倣する創薬(全身筋組織の恒常性維持力を高める創薬)の可能性を動物レベルで実証することを目的とする。本年度は心臓のTRPC3チャネルに着目した研究を行った。TRPC3チャネルは心臓に血液が充満する際に生じる心筋細胞の機械的伸展刺激によって活性化され、活性化されるカチオンチャネルであるが、心筋細胞内のグローバルなCa2+濃度に影響を与えず、静止状態のCa2+濃度をわずかに増加させた。このTRPC3を介するわずかなCa2+濃度上昇が同じ心筋細胞膜上に存在するNADPH酸化酵素(Nox2)を活性化し、活性酸素の生成を増強することを見出した。TRPC3はNox2タンパク質を相互作用依存的に安定化し、Nox2由来の活性酸素が微小管結合タンパク質GEF-H1を介して心臓の線維化(硬化)を誘導することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
TRPC3-Nox2複合体が心肥大のみならず、抗がん剤投与で誘発される心臓の萎縮にも関与することを見出しており、その機構解析の過程でTRPC3チャネルが心筋の柔軟性を制御していることも発見している。一方で、TRPC3とヘテロ多量体チャネルを形成すると考えられていたTRPC6がTRPC3-Nox2複合体と競合的に働くこと、TRPC6が習慣的な運動によって発現増加することなども見出しており、運動による心不全予防効果の分子機構が明らかになってきている。
特になし。現状のまま遂行する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 9件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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