研究課題
TRPC3チャネルが心筋の硬化(線維化)を制御する分子であること、その機構としてTRPC3チャネルによるカチオン流入ではなく、細胞内の活性酸素種(Reactive Oxygen Species; ROS)の生成が心臓の病態形成(組織リモデリング)に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。昨年度にTRPC3とROSシグナルをつなぐ機構として、TRPC3タンパク質が細胞膜ROS生成酵素Nox2を複合体形成依存的に分解抑制(安定化)することを見出した(Sci Rep, 2016)。心臓におけるTRPC3-Nox2複合体形成はメカニカルストレスだけでなく、抗がん剤投与や低酸素ストレスによって強く誘導されることも明らかとなり、TRPC3-Nox2複合体が心筋細胞の柔軟性や線維化(硬さ)を制御する創薬標的分子となる可能性が示されてきた(JCI insight, 2017)。この研究の中で、TRPC3チャネル活性やNox2酵素活性を阻害する作用では心不全の進行を抑制できず、プラスα作用としてTRPC3-Nox2相互作用を阻害(すなわちNox2発現増加を抑制)できる化合物が心不全治療に有効であることもわかってきた。実際、TRPC3のNox2相互作用に必要なC末端配列(51アミノ酸)を心筋細胞特異的に発現させることで、抗がん剤投与による心筋萎縮(心不全)が有意に抑制されることをマウスレベルで実証した。一方、TRPC3のNox2安定化作用はTRPC3と相同性・機能類似性の高いTRPC6やTRPC7では認められなかったことから(Sci Rep, 2017)、C末端51アミノ酸のうち、TRPC3特有の21アミノ酸がNox2安定化に必須である可能性が示された。実際、運動負荷させたマウスにおいてもTRPC3-Nox2複合体形成がほぼ完全に抑制され、抗がん剤による心筋萎縮も抑制された。
2: おおむね順調に進展している
運動による心筋柔軟性を調節する機構として、TRPC3-Nox2タンパク質複合体形成を見出した。
TRPC3-Nox2複合体形成を抑制する既承認薬を同定し、これをマウスに投与することで運動療法と同じ効果が得られるかどうか下肢虚血モデルとかけあわせることで検討する。
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