本研究では天然資源の抽出物に対して直接,化合物の分子骨格を変化させる反応を行うことで得られる”多様性拡大抽出物”を活用することで,高度な構造多様性と薬理活性を示す可能性の高い構造を併せ持つ,薬理活性を指向した天然物類縁体ライブラリーの創出を目的とする.その中でも,薬理活性を示す可能性の高い化合物群として,モノテルペンインドールアルカロイド型化合物に着目している.昨年度までにトリプタミンとの(Iso-)Pictet-Spengler反応に基づく,非天然型モノテルペンインドールアルカロイド類縁体を取得し,その中から免疫チェックポイント阻害作用(CTLA-4発現抑制作用)を示す化合物4種を見出している.今年度は,その中でも最も強力なCTLA-4発現抑制作用を示した化合物 Co-1 を基盤としたフォーカスドライブラリーの構築とその活性評価をおこなった.具体的には,イリドイド配糖体を多く含む植物サンシュユの抽出物に対してβ-グルコシダーゼを作用させて脱グルコシド化したものに対して,インドール環がハロゲン原子・ヒドロキシ基・メトキシ基等で置換されたtryptamine誘導体やtryptophan誘導体をそれぞれ作用させ,Co-1 誘導体を取得した.さらにCo-1誘導体のヒドロキシ基にベンジル基・アルキル基等を導入することで,20種の化合物から成るフォーカスドライブラリーを構築した.このライブラリーからは,CTLA-4発現抑制作用と同時に,同じく免疫チェックポイント分子であるPD-L1発現抑制作用を示す化合物を見出し,低分子による新規免疫チェックポイント阻害剤のシード化合物の創出を達成した.
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