研究課題/領域番号 |
16H05094
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高山 廣光 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (90171561)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 天然活性物質 / アルカロイド / リガンド / 構造決定 / 全合成 |
研究実績の概要 |
1. TRP受容体アンタゴニスト活性を有する新規イボガ型インドールアルカロイド発見を目指し、キョウチクトウ科植物Voacanga africanaの葉部及び同科植物Ervatamia cumingianaの地下部を用いて成分探索を実施した。その結果、後者の素材から3種の新規インドールアルカロイドを単離、構造決定した。さらに、同活性を有するイボガ型アルカロイドの不斉全合成に取り組み、酵素を用いた光学分割法を鍵段階として、網羅的にイボガ型アルカロイドを合成可能とする重要中間体の合成に成功した。この中間体から、今年度はVAR5と仮称した新規アルカロイドの初の不斉全合成を達成した。 2. 当研究室において見出したミトラガイナアルカロイド類は、β-ArrestineをリクルートせずGタンパク質のみを活性化しているバイアスアゴニストであることが示され、これによりモルヒネと比べ消化管運動の抑制などのオピオイドに特有な副作用が弱い可能性が示された。そこで、強力な鎮痛活性を発現する新規誘導体MGM-30のオピオイド受容体とのドッキング計算を行った。その結果、本化合物は活性型オピオイドμ受容体に於いて、モルヒネとは異なる部位で、非常に効率よくポケットにはまっていることがわかった。 3. アセチルコリンエステラーゼ阻害活性を有するリコポジウム属アルカロイドの探索と全合成研究を行った。この中で、LycopoclavamineとLycopodineの不斉全合成を達成することができた。ヒガンバナ科植物から発見した新規ヘテロ二量体アルカロイドの全合成研究を実施し、これを構成する二つのユニット(ガランタミン型とタゼチン型)の不斉合成を完了した。 4. 中枢神経系に作用する天然物の探索を目的に、いわゆる脱法ハーブとして知られる「シニクイチ」の起源植物であるHeimia salicifoliaの成分探索を行い、多くの新規キノリチジンアルカロイドを発見、構造決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キョウチクトウ科植物Ervatamia cumingianaの地下部を用いて成分探索を実施し、3種の新規インドールアルカロイドを単離、構造決定できた。(投稿論文執筆中)また、いわゆる脱法ハーブとして知られる「シニクイチ」の起源植物であるHeimia salicifoliaの成分探索を行い、多くの新規キノリチジンアルカロイドを発見、構造決定した。植物から単離したこれらアルカロイドの中枢性作用については活性評価中である。活性化合物であるイボガ型インドールアルカロイドVAR5と2種のリコポジウムアルカロイドの不斉全合成を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 平成29年度に得た成果を基にして、TRPチャネルに対するアンタゴニスト活性を有する天然物リガンドのイボガ型インドールアルカロイドの網羅的な不斉全合成ルートを完成することで、活性評価用サンプルの構造多様性を広げる。また、キョウチクトウ科植物Voacanga africanaの葉部の成分探索を引き続き実施し、あらたなイボガ型インドールアルカロイドの発見を目指す。 (2) β-ArrestineをリクルートせずGタンパク質のみを活性化していることが示され、これによりモルヒネと比べ鎮痛耐性の形成、依存性、呼吸抑制、消化管運動の抑制などのオピオイドに特有な副作用がほとんどないことが示されたミトラガイナアルカロイドに関して、オピオイド受容体とのドッキング計算を利用して合理的誘導体合成をさらに継続する。 (3) アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の発見を目指して、Lycopodium属植物の成分探索と新規アルカロイドの全合成研究を実施する。全合成研究ではHuperzine-HとPalhinine Aの不斉全合成を目指す。これにより、活性評価用試料を供給する。また、ヒガンバナ植物から見いだした新規2量体型アルカロイドとHeimiaから見出した新規キノリチジンアルカロイドの全合成の完成を目指す。
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