本年度は、① in vivo 様の感染モデルであるカイコ評価系を利用し、天然資源より治療効果を示す可能性の高い新規候補化合物を探索、② これまでに発見した化合物の治療効果をカイコ評価系で確認し抗生物質シードとして可能性を見極めることを目的として進めた。 ① ついては、真菌症および結核症に対する新規抗生物質のスクリーニングを中心に実施した。まず真菌症に対しては、新規化合物の取得には至らなかったが、接合菌(Rhizopus oryzae)に対する生育阻害物質として放線菌の培養液中より herbicidin A を単離した。次に結核症に対しては、新たに Mycobacterium bovis BCG をカイコに感染させることに成功した。これにより、M. smegmatis 感染カイコと共にスクリーニング初期で利用し、より早い段階で治療効果を示すサンプルか否かを判断できるようになった。また、日本では結核症の罹患率を上回っている非結核性抗酸菌(NTM)症の起因菌 M. avium および M. intrasellulare のカイコ感染モデルも同様に構築し、スクリーニングに利用できるようにした。その結果、放線菌の培養液中より、chartreusin および griseoviridin を単離し、これらが治療効果を示すことを初めて明らかにした。 ② については、結核症あるいは NTM 症治療薬の開拓の一環として、当研究室で保有する天然化合物ライブラリを構築したカイコ感染モデルでの評価に着手している。その過程で、海洋由来放線菌が生産する ohmyungsamycin が NTM 症起因菌モデルにおいて優れた治療効果を示すことを明らかにした。現在、新規マイナー成分の取得を進めている。
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