研究課題/領域番号 |
16H05096
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
根本 清光 東邦大学, 薬学部, 教授 (90189366)
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研究分担者 |
菅野 裕一朗 東邦大学, 薬学部, 講師 (40453849)
佐藤 忠章 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (80287549)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 認知症 / アルツハイマー病 / 神経科学 / 農林水産物 / 疾患予防 / 遺伝子発現 / 疾患モデル動物 |
研究実績の概要 |
柑橘類果皮由来ノビレチン(NOB)は、アルツハイマー型認知症(AD)など種々認知症病態モデル動物の認知機能を改善する作用がある。したがって、NOBの作用機序解明やそのヒト認知症患者に対する有効性の証明は、ADを含めた認知症の治療法や予防法の開発に大きく貢献するものと思われる。本研究では、NOBやNOBを高含有する柑橘類果皮エキスが、どのように遺伝子発現やタンパク質発現・活性に変化をもたらすか、そして、それら変化がどのように認知機能改善効果につながるかを神経分化・機能のモデル培養細胞や認知症病態動物で検討し、NOBおよびNOBを高含有する柑橘類果皮エキスの認知症改善・予防への活用につながる科学的エビデンスを提供することを目的としている。 研究2年目は、これまでの解析データを基に、次のような研究を実施し成果を得た。(1)NOBには、酸化ストレスや小胞体ストレスの増悪因子とされるthioredoxin-interacting protein(TXNIP)の発現を低下させる作用があることを見いだしており、それがNOBの有益作用の鍵になるものと注目しているが、その発現低下作用の機構として、転写レベルで調節されていること、TXNIP遺伝子の5'上流領域にその調節に関わる塩基配列が存在することを明らかとした。(2)TXNIPの遺伝子転写調節やそのタンパク質の安定化に関わるとされるAMP-activated protein kinase(AMPK)は、SK-N-SH細胞へのNOB処理でリン酸化(活性化)が亢進すること、さらにそのリン酸化(活性化)に関わるliver kinase B1(LKB1)もまたNOB処理でリン酸化(活性化)されることを見いだした。(3)NOBを高含有する柑橘類果皮濃縮エキスの低用量で、若齢期からのAPP NL-G-Fマウスへの経口投与を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の最大の目標としている、NOBを高含有する太田ポンカン果皮濃縮エキスの低用量経口投与での認知症モデルマウスへの効果の検証については、モデルマウスの入手や繁殖の遅れを理由として、計画当初の予定から遅れている。しかし、本年度後半から投与を開始しており、最終年度である30年度にはその効果を明らかにすることができると考えている。 一方、NOBの作用発現機序解明の糸口とすべく、NOBの細胞内での遺伝子発現や細胞内因子(タンパク質)の活性変化に対する影響を検討し、このことについては、順調に成果を得ることができている。最終年度もさらに細胞レベルでの検討を進めるとともに、その成果を基盤として、NOBを高含有する柑橘類果皮エキス投与マウス脳でも検討を行うこととする。このことにより、NOBの作用発現機序解明の糸口を捕らえることができるものと考えている。 以上の事から、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果から、酸化ストレスや小胞体ストレスの増悪因子であるTXNIPの発現抑制がNOBの有益作用発揮のための鍵になると考えている。この発現抑制機構を、遺伝子発現やタンパク質発現ならびに種々細胞内のシグナル伝達系の検討をさらに進め、さらに明らかにしていく予定である。この検討は、前年度まで培養細胞株によるものであったが、初代培養化神経細胞、さらには、NOB投与APP NL-G-Fマウスの脳での検討を加える。これらの試みから、NOBの作用発現機序を総括することとする。 アルツハイマー病病態モデルマウスAPP NL-G-Fマウスについて、NOBを高含有する柑橘類果皮濃縮エキスの低用量で、若齢期からの経口投与を進め、Y字迷路解析など行動解析に基づいた認知機能の検討や脳内のアミロイドβの蓄積量を含めた病理組織変化、種々遺伝子の遺伝子・タンパク質発現変化を評価する。 これによって、柑橘類果皮成分NOBの認知症改善・予防への活用に向けた科学的エビデンスを提供するものとする。
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