研究課題
1) ビグアニド系化合物の構造展開で得られた強力な低栄養選択的毒性化合物の作用機構の解析を行った。結果、これらの化合物はグルコース欠乏環境で、ミトコンドリア呼吸から解糖系呼吸にシフトすることで、エネルギー枯渇に導く。さらにERストレス応答阻害によりc-Mycの発現を急速にダウンレギュレートし、アポトーシスを誘導することを明らかにした。2) 酸化ストレス応答修飾作用物質のスクリーニングとして、独自の二価鉄蛍光プローブを用いて、HepG2細胞における触媒活性鉄の増加や減少を指標とした化合物ライブラリースクリーニングを実施し、細胞の酸化ストレスを誘導または抑制する可能性があるリード化合物を絞り込んだ。さらに、各種細胞小器官の二価鉄を同時にマルチ蛍光カラーイメージングする手法を確立し、フェロトーシス誘導剤(erastin, sulfasalazine(SSZ) など)処理における二価鉄蛍光イメージングを行った結果、細胞死に先んじてリソソーム、ERにおいて二価鉄が上昇し、これは細胞内鉄プール由来であることが明らかになった。本法は新たなフェロトーシス検出方法として有効と考えられる。3) 子宮頸癌手術検体の分析により、CD44v及びシスチントランスポーターサブユニットのxCTの発現が予後や治療抵抗性と関連することを明らかにした。そこで、 HeLa(CD44v-)及びCaSki(CD44v+)細胞に、erastin及びxCT阻害剤のSSZを単独または併用処理し、細胞毒性を調べたところ、CaSki細胞はerastin抵抗性だが、SSZの併用によりフェロトーシス誘導が増強された。これは高濃度の細胞内GSHをSSZによって抑制し、ROS生成が増強されるためであることを明らかにした。以上により、CD44v陽性の治療抵抗性子宮頸癌において、フェロトーシス誘導治療が有効であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
新規化合物の構造展開およびライブラリスクリーニングにより、酸化ストレス耐性解除または酸化ストレス増強活性を有する種々の化合物を得ることができた。臨床検体の解析で、酸化ストレス耐性ががんの予後不良と相関することを見出した。この結果は、本研究の目指す、酸化ストレス解除による治療法の有効性を指示するものである。以上により順調に成果が得られたと考えられる。
子宮頸がんの予後不良因子として酸化ストレス耐性因子が関与していることを明らかにしたことから、我々のスクリーニング戦略ががん微小環境における酸化ストレス耐性を解除しうる化合物の獲得に有効であることが示唆されたことから、得られた化合物の構造最適化、標的タンパク質の同定、in vivo評価へと展開する。さらに、エネルギー代謝再構築に関与する新規候補物質につについても標的タンパク質の同定、in vivo評価を目指す。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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