研究課題
有望ながんの新たな治療標的とその阻害剤を見出すために、当部でこれまでに取りためた数千種類の抗がん物質のJFCR39パネル感受性データを用いて、一部のがん細胞にのみ奏功しその他の細胞には影響しない物質を複数同定した。昨年、EGFR阻害剤ゲフィチニブが、ErbB4のキナーゼ活性を抑制することによりErbB4過剰発現細胞に抗がん効果を示すことを明らかにした。本年度、新たな研究対象として、開発中の新規分子標的Xの阻害剤Dxが、標的遺伝子であるXの発現量の多寡にかかわらず、JFCR39のうち4細胞株にのみ著効を示すことに注目した。そこで、JFCR39パネルの中で、薬効が高い細胞ほど発現量が多い遺伝子を抽出し、それらを順次siRNAにより発現ノックダウンを行うことにより抗がん効果への機能的関与を検討した。その結果、遺伝子Yの発現をノックダウンさせることにより薬剤Dxの感受性が消失することがわかった。現在、薬剤Dxによる選択的抗がん分子機構の全貌を明らかにするべく、研究を進めている。上記に加え本研究課題では、がん細胞株にゲノムワイドなバーコードshRNAライブラリーを発現するレンチウイルスを感染させ、薬剤非存在下で10~14日培養する間に増減するshRNAの測定することにより、細胞株ごとに異なる増殖・生存にかかわる遺伝子群のプロファイリングを順次進めている。米国ブロード研究所では先行して類似の研究が進められているが、我々の解析法は彼らが進める“がん依存性マップ”とは異なる精緻な方法で進めているため、より正確なプロファイリングが可能となっている。本研究課題で確立した研究手法を用いて、JFCR39だけで別の細胞株の解析にも応用しており、がんの増殖・生存を標的とした新たな薬物療法を実現するための強力なツールとなっている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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