研究課題/領域番号 |
16H05106
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
小松 康雄 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ付 (30271670)
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研究分担者 |
周東 智 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (70241346)
平野 悠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (70415735)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | microRNA / antisense / RNA / miRNA / oligonucleotide / oligonucleotide therapy |
研究実績の概要 |
1)CL2本鎖含有anti-microRNA oligonucleotide (CL-AMO)の細胞内動態の評価 microRNA(miRNA)と相補的なオリゴ核酸(AMO)は、miRNAの効果を阻害することが可能で医薬品としても期待されている。昨年度までに、独自の手法で糖部をクロスリンクした2本鎖(CL2本鎖)構造を有するAMOのmiRNA抑制活性は、AMOに対するCL2本鎖の接続部位(5'末端側、3'末端側)に依存し、細胞内の動態も接続部位に相関する可能性を明らかにした。平成30年度は、細胞内に導入した蛍光標識CL-AMOの細胞質、核における局在量比の解析方法について検討し、生細胞を対象に核と細胞全体のそれぞれを染色して同時に観察することで、CL-AMOの細胞内局在の評価が可能となった。これにより、核や細胞質へのCL-AMOの局在はCL2本鎖の接続部位に強く依存し、5'末端側に接続すると細胞質に、3'末端側に接続すると核に局在する様子が確認できた。また、5'末端および3'末端の両側にCL2本鎖を接続したCL-AMOは、一本鎖型のAMOとは異なる細胞内動態を示すことを確認した。miRNA抑制活性と細胞内動態の関係においては、細胞質に局在するAMOの方が、高いmiRNA抑制活性を持つ可能性が得られた。さらに、細胞導入後48時間以降の蛍光強度を観察することで、蛍光標識CL-AMOの細胞内の残留量と核酸分解酵素の耐性に相関があることを見出した。 2)CL2本鎖含有AMOのがん細胞における増殖抑制の評価 がん細胞に対するCL-AMOの効果を評価するために、がん細胞において細胞内濃度が増加していることが知られているmiR-21などを標的とするCL-AMOを乳がん細胞へ投与し、その増殖抑制効果を調べた。悪性度の異なる二種類の乳がん細胞株にCL-AMOを細胞導入して10日後までの細胞増殖能を評価したところ、他のAMOと比較して、比較的、長期間増殖を抑制する効果を示すことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H30年度は、独自の手法で糖部をクロスリンクした2本鎖(CL2本鎖)構造を有するAMOの開発を進め、論文発表を行った。また、CL-AMOの細胞内動態の解析手法を開発し、評価することで新たな知見を得ることができた。特にCL2本鎖をAMOに接続する部位が細胞内での動態に大きく影響し、その構造に応じて核や細胞質に局在することなどの結果を得ることができ、学会発表も行った。そのため、H30年度の本研究課題は概ね計画通りに進んでいると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度の結果より、細胞内における様々な構造のCL2本鎖構造を有するAMOの核と細胞質における局在量比を評価することが可能となった。そこで今後、AMOの配列やCL2本鎖の位置と、細胞内での局在との相関性を解析し、CL-AMOの有する高いmiRNA抑制活性の本質を明らかにする。また、本成果をさらに活性の高いAMO開発に展開する。加えて、悪性度の高い乳がんの増殖抑制にCL-AMOを適用してCL-AMOの応用面の検証も進め、CL2本鎖を有するAMOが核酸医薬として有効であることを実証する。
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