研究課題/領域番号 |
16H05107
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研究機関 | 昭和薬科大学 |
研究代表者 |
石井 功 昭和薬科大学, 薬学部, 教授 (90292953)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ホモシステイン / 心血管病 / 危険因子 / トランススフルレーション / アミノ酸代謝 / PPARalpa / 脂質代謝 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
血中ホモシステイン濃度の上昇は心血管病発症の危険因子として広く認識されているが、何故それが病態に繋がるかは不明である。我々は高ホモシステイン血症の遺伝モデルであるCBS欠損マウスの解析を通して、その解明を目指している。脂肪肝を発症するCBS欠損マウスの肝臓のProteomics解析を行ったところ、特定のタンパク質群の発現変化が見られることが解り、さらにはそれが脂質代謝の主要制御因子であるPPARalphaによる制御であることが判明した。そしてさらにin vitro実験により、PPARalphaの活性化をホモシステインの二量体であるホモシスチンが阻害することを見出した。そこでPPARalphaの結晶構造解析によりホモシスチンによる阻害の分子メカニズムを探すことにし、世界でわずか18例しか報告されていないPPARalpha結晶構造解析に成功している山梨大学の大山拓次准教授との共同研究を開始した。様々な結晶化条件を探すうちに、内在性脂肪酸が結合した活性化型のPPARalpha結晶の作成と世界最高の解像度でのX線構造解析に成功した。ホモシスチンと共に結晶を作成したところ、Cys248にホモシステインとして結合していることが判明し、これが阻害メカニズムかと想定したが、①Cys248のアラニン置換変異体でもホモシステイン阻害が観察され、②ホモシステイン結合時も活性化型のFormをとったままであることが判明した。その後、ホモシステインとして結合する他の回折像も取られたが、明白な電子密度マップは取られていない。様々な結晶化条件をさらに探す中で、未だ報告例のないフィブレート系薬とPPARalphaとの結合結晶の高解像度解析に次々と成功し、アンタゴニストとしてのホモシスチンの役割にも迫りつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでPPARgammaとそのリガンドとの結晶構造解析は180例ほどあるが、我々が成功したPPARalphaとそのリガンドとの結晶構造解析例はわずか18例にしか過ぎない。しかも、高脂血症治療薬(高トリグリセリド血症治療薬)として使用されている5種のフィブレート系医薬品については報告例が全くない。その解析に我々は思いがけず成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は様々なPPARalphaリガンド、Coregulator peptide、ホモシスチンとのPPARalpha共結晶の作成を試み、それぞれ高解像度でのX線構造解析を目指す。コレプレッサーが結合したPPARalphaの非活性化型Formの解析例は1例のみであり、ホモシスチンによる阻害時のみならず、PPARalphaの活性化型と非活性化型の幾つかの構造解析を行い、詳細な活性化メカニズムを探る。
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