研究課題
1)酸化ストレス誘導剤投与による突然変異ホットスポットの誘発: gpt遺伝子をゲノム上にもつMsh-OK gpt deltaマウスをMsh-KOマウスとgpt deltaマウスの交配により作出し、酸化ストレス誘導債として1.5 g/L KBrO3を4週間飲水経口投与した。投与終了後、滅菌水2週間飼育したのちに小腸上皮粘膜を採取し、酸化DNA付加体によるDNA損傷の修復機能が欠損している状態での突然変異誘発の解析に向けた準備を行った。予試験として、同様の酸化ストレス誘導剤として、亜ヒ酸Naや重クロム酸Naの投与実験を行った。86 mg/kgの亜ヒ酸Naを3週間オスC57BLマウスに混餌投与したが、小腸での腫瘍発生は認められなかった。また、重クロム酸Naを最高257.4 mg/Lの用量で28日間、および最高85.7 mg/Lの用量で90日間、オス gpt deltaマウスに飲水投与したが、小腸粘膜での突然変異頻度の上昇は見られなかった。2)薬剤投与によらない酸化ストレスによる突然変異誘導の解析: 本年度は予試験として、2 g/L KBrO3をC57BLマウスに4週間飲水投与した後、2% デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を1週間さらに飲水投与し炎症を誘導した。酸化ストレスと炎症により小腸と大腸に腫瘍が発生することを期待しているが、投与終了後3か月後の解剖でも、腫瘍は観察されていない。3)Msh2-KOマウスのエクソゾーム解析: Msh2遺伝子欠損マウスの小腸に自然発生した腫瘍および小腸の腫瘍周辺の正常組織、また、基本的に器官形成後には細胞分裂を行わない状態の心臓からDNAを調製してエクソーム解析(対象塩基配列:50Mb)を行った。それぞれのサンプルでコールされた1000以上の変異サイトをフィルタリングした結果、腫瘍特異的変異として一塩基置換約800、欠失/挿入約500サイトが検出された。特にマイクロサテライト配列での数ユニットの増減が多数検出された。現在、変異サイトの配列特徴などの詳細な解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
Msh2-KOマウスのついての実験は、概ね計画通りに研究は進捗している。期待していた亜ヒ酸Naや重クロム酸Naの投与による小腸で腫瘍の発生や突然変異の誘発は観察できなかった。また、炎症が誘導する酸化ストレスが誘発する消化管での突然変異誘発を観察できるよう検討を進めているが、その基本となる、デキストラン硫酸ナトリウム投与による腫瘍誘発の条件をさらに検討する必要がある。
変異体gpt遺伝子をMsh2-KOマウス小腸のゲノムDNAから回収しDNA塩基配列を決定する。臭素酸カリウム投与あるいは非投与のマウスから回収した100クローン以上の多数の変異体gptを解析し、406番塩基(GAA配列中のG塩基)の‘G to T transv ersion’や他の酸化ストレスにより誘導された突然変異のホットスポットを同定する。同時に、臭素酸カリウム投与により誘導された腫瘍についてエクソソーム解析を行い、酸化ストレスによりゲノム上でどのような突然変異が発生したかを明らかにする。また、8-oxo-dGが生成されているDNA上の塩基を同定する新規の手法を導入して、406番塩基などの突然変異誘発のホットスポット上で、酸化ストレス剤の投与により8-oxo-dGの生成が上昇しているかを明らかにする。
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