研究課題
消化管において栄養物・医薬品の吸収調節に働くトランスポーターに対する食品作用ならびに食品成分の吸収機構に関する検討を行った。従来より食品成分として低分子が対象とされているが、本研究では食品に含まれるナノ粒子に着目し、ナノ粒子中に含有される高分子が作用するという新しいメカニズムの存在の実証を試みた。対象としてリンゴとグレープフルーツに着目したところ、粒子径として100nm程度の粒子が含まれ、電顕写真によって同直径の球形粒子の存在が裏付けられた。消化管モデル細胞としてCaco-2 細胞に対して本粒子画分を24時間反応させたところ、複数のトランスポーター分子のmRNA発現量が低下した。薬物吸収に関与するOATP2B1に着目したところ、タンパク質発現量ならびに輸送活性の低下も観測された。発現低下機構としてOATP2B1遺伝子であるSLCO2B1の対応部位として3’-UTRが見出された。3’-UTRではマイクロRNAによる調節が考えられた。リンゴ含有マイクロRNA中にSLCO2B1と反応性が予測される分子について検討を進めた。その結果、リンゴ由来マイクロRNAにより本トランスポーターの発現が抑制されることが合成マイクロRNAを用いた検討等により示された。その他にも変動するトランスポーターが見出され、マイクロRNAのような高分子も含めた食品による作用の存在を新しく示すことができた。一方、多くの生理機能を発揮するカテキン類についてその消化管吸収に関わる分子の同定を試みた。EGCgについて長期投与により吸収性が増大する現象に着目し、マウス消化管で発現変動する分子に着目したスクリーニングを行った。その結果、新規にDTDST(SLC6A3)をEGCgの吸収に関与することを見出した。以上のように、食品の消化管動態・作用に関する多様なメカニズムの存在を示すことができた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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