マイクロニードル(MN)ワクチンの免疫誘導メカニズム解析に向けた皮膚常在性抗原提示細胞の機能・動態解析並びに所属リンパ節におけるリンパ球特性解析を行った。まず抗原特異的抗体産生におけるT 細胞の関与を明らかにすべく、T 細胞欠損マウス並びにCD4 陽性T 細胞枯渇マウスを用いて評価した結果、何れのマウスにおいても抗体産生誘導効果が失われていることを明らかにした。また抗原特異的CD4 陽性T 細胞の所属リンパ節でのレスポンスを評価する目的で、蛍光標識したOVA 特異的T 細胞レセプターを持つCD4 陽性T 細胞を移入したマウスに、注射或いはMN にてOVA 免疫を行い、移入したOVA 特異的CD4 陽性T 細胞の分裂増殖を検討した。その結果、MN群の分裂頻度は注射群と比較して高い状態を示した。さらに本実験にて分裂増殖したT 細胞について、MN群では注射群よりもエフェクターT 細胞への誘導効果が高い傾向が認められ、またエフェクターメモリーT 細胞への分化効率もMN群のほうが注射群よりも優れる傾向にあった。以上並びにこれまでの結果を総合すると、MNワクチンにおいて皮膚内に送達される抗原の深度が、標的となる抗原提示細胞サブセットの種類を選択し、T細胞およびB細胞の分化の方向性に影響を及ぼすことが示唆された。 一方、四価のインフルエンザHA抗原を塗布したMNワクチン製剤のヒトにおける有効性・安全性評価を行ったところ、MNワクチン投与4週間後における血清中HI価は、全てのインフルエンザHAワクチン株において、投与前よりも上昇している事が確認された。また安全性については、貼付直後から貼付部位に紅斑が観察されたが、7日後には局所の炎症反応がほぼ軽快していた。また血液生化学的検査においても異常が認められなかったことから、安全性においても問題が無いと判断した。
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