研究課題
本研究の目的は、オーバーハウザー効果で知られる動的核偏極(DNP; Dynamic Nuclear Polarization)を利用してヒトを含めた生体内のフリーラジカルをMRIで可視化する装置開発に向け基礎的知見を得ることである。DNPは核スピンと電子スピンの磁気共鳴を利用した方法で、NMRとESRで658倍も異なる共鳴条件を外部磁場変換即ちフィールドサイクル(FC)で補償することが有効とされている。事実、NMRにおいて試料転送方式でDNPの高感度化が図られているが、MRIに関する研究は非常に少ない。そこで、臨床応用可能なFC-DNP-MRI開発を目指して、昨年度から、新たに核スピン緩和や電子スピン共鳴飽和、核スピン・電子スピン相互作用など磁気共鳴の量子化学基礎理論をベースに数理モデルを作成し解析を始めた。本年度は、昨年度の数理モデルを検証すると共に種々の条件化でシミュレーションを行いFC-DNP-NMRの特性を解析した。また、これまでの科研費で得られた画像データを参照しFC法による画像の変化などを定量的に算出した。更に、特性の異なるフリーラジカルについて種々の条件化で電子スピン共鳴の飽和実験を行い、フリーラジカルの存在状態よってESR照射エネルギーと電子スピン遷移の関係が異なることが示された。これらの電子スピン遷移の情報を数理モデルに導入して解析を進めた結果、定常状態法には限界があることが見出された。今回の研究から得られた数理モデルを用いた解析手法を実測条件下でのシミュレーションに外装することでヒト診断用装置設計が可能となり、有用な基礎的知見が得られた。これらの結果の一部について、7月にフランスで開催された国際MRI学会で口頭発表に選出され報告した。また、国際電子スピン学会のフェローに推挙され11月に札幌で開催された第57回電子スピンサイエンス学会で記念講演を行った。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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