研究課題
本研究課題では、CKD進行に伴う腎-遠隔臓器連関の新たな病態進展因子としてアルブミン分子の多様性(結合内因性物質(尿毒素、脂肪酸)、翻訳後修飾)に着目し、1)CKD患者(250例)の血清及び尿中アルブミン分子の多様性を切り口に、CKD、CVD及びサルコペニア・骨萎縮の臨床データとの連関解析を行い、悪玉である病原性アルブミンを絞り込み、その病態進展の予測・診断マーカーとしての可能性を検証する。次に2)細胞及び動物実験において、病原性アルブミンによる腎、血管及び筋肉・骨障害の系統的精査を行い、CKD病態生理機序を解明するとともに、それを基盤として包括的治療法の探索を試みる。すなわち、本申請課題は、病原性アルブミンを基軸とした新規CKD個別化診断・治療戦略の道を拓く画期的な循環型のトランスレーション研究である。2018年度はCKDの病態生理と脂質代謝との関連について、以下の知見を得た。すなわち、本年度は、腎組織中脂肪酸の質的違いと腎病態形成との関係について明らかにすることを目的とした。方法として、急性腎症としてシスプラチン腎症及び慢性腎症として5/6腎摘マウスを用いた。全脂質中の脂肪酸組成はGC-MSで測定した。その結果、急性及び慢性腎症マウスにおいて、腎組織中の飽和脂肪酸、特にパルミチン酸(C16:0)の減少とステアリン酸(C18:0)の上昇が観察された。C18:0はC16:0に比べてHK-2の細胞生存率を低下させたため、次に、脂肪酸代謝蛋白質に着目した。腎組織中の脂肪酸代謝蛋白質発現は腎機能の低下に伴い上昇し、その際、腎組織中の酸化ストレスと正の相関を示した。以上の結果より、酸化ストレスによる腎組織中の脂肪酸代謝蛋白質発現の誘導は、細胞毒性の強いC18:0を蓄積する結果、急性及び慢性の腎病態進展に関与することを初めて見出した。
2: おおむね順調に進展している
本年度はCKDの病態生理と腎組織中の脂質代謝との関連について検討を行った。その結果、酸化ストレスを介した腎組織中C18:0の蓄積が急性及び慢性の腎病態進展に関与する可能性を見出したことから(論文作成中)、概ね順調に進展していると判断した。
脂肪酸代謝に関わるノックアウトマウスの作成を進める。同時にアデノウイルスによる標的蛋白質の強制発現系を用いた系を確立し、我々が見出した脂質代謝系の腎病態進展における寄与を明確にする。
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