研究課題
腎組織中の脂肪酸組成変動と腎病態との関連を明らかにするために、シスプチン腎症マウスを用いて検討した。その結果、腎障害マウスの腎組織においてC16:0の減少と C18:0の上昇が観察され、その際、近位尿細管細胞においてC16:0からC18:0への脂肪酸伸長の律速酵素であるElovl6の発現上昇が観察された。Elovl6の代謝産物であるC18:0はC16:0と比較して、ヒト近位尿細管上皮細胞株(HK-2細胞)における高い細胞障害性及びERストレス依存的なアポト―シス誘導因子であるCHOP発現を上昇させた。Elovl6を強制発現及びノックダウンしたHK-2細胞を用いた検討からも、Elovl6依存的なC18:0による尿細管細胞障害を確認した。近位尿細管細胞においてElovl6の発現誘導因子として、アルブミン酸化物であるAOPPs (advanced oxidation protein products)を同定した。実際に、AOPPs負荷マウスの腎組織ではシスプラチン腎症同様にElovl6発現及びC18:0の上昇が観察され、近位尿細管細胞障害マーカーであるKIM-1発現と正の相関関係を示した。また、AOPPsによるElovl6誘導機序としてmTORC1/SREBP1c経路を明らかにした。5/6腎臓摘出CKDマウスにおいても腎組織中Elovl6発現の上昇が観察され、本障害機序は慢性期にも寄与している可能性が示唆された。
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Kidney360
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