研究課題/領域番号 |
16H05116
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大和田 祐二 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教授 (20292211)
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研究分担者 |
香川 慶輝 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30728887)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アストロサイト / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 視床下部 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
神経系細胞の脂質恒常性の変化と、神経精神疾患病態との関連性について、脂肪酸代謝制御に重要な役割を果たす脂肪酸結合蛋白質(FABP)に着目し、遺伝子ノックアウトマウスおよび培養細胞レベルでの解析を行った。以下、本年度得られた結果を記す。 1.脂肪酸結合タンパク質FABP7が、ACの細胞核に局在し、特定の遺伝子のヒストンアセチル化を介して遺伝子発現調節に関わること。しかも変異蛋白質の発現実験からは、FABP7のエピゲノム調節には、脂肪酸との結合の有無が重要であることが明らかとなった(現在投稿準備中)。2.視床下部において、FABP7はACとOPCに高い発現を示し、遺伝子変異マウスの解析からは、FABP7が弓状核のPOMC陽性細胞において、視床下部の摂食応答に重要な役割を果たすレプチンに対する応答性調節、ひいては高脂肪食に対する摂食応答や体重変化に深く関わることが明らかとなった(Mol Neurobiol 2018)。 3.大脳皮質前帯状回皮質の抑制性介在ニューロンにFABP3が特異的な発現を示し、GABA合成酵素であるGAD67の遺伝子発現をDNAのメチル化修飾を介して調節することを明らかにした。さらに、FABP3ノックアウトマウスに対するメチル基の長期投与によりGAD67遺伝子のプロモーターのメチル化状態がレスキューされ、マウスの行動異常が改善されることを見出した(論文投稿中)。 以上の結果から、FABP分子が、種々の神経系細胞において、細胞内の脂質環境を調節することにより、エピジェネティックな遺伝子調節に関わることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞への安定した遺伝子導入により細胞内脂質代謝と遺伝子発現調節に関する再現性の高い実験が可能となった。高い感度でOPCやACの可視化が可能なトランスジェニックマウスも完成し、解析に使用することができる状態となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒトの精神疾患で検出されたFABP遺伝子変異に着目した解析を行う予定である。
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