研究課題
脂質恒常性の変化に伴う、グリアおよび神経細胞のエピゲノム変化について解析を行った。その結果、1)前頭前野の抑制性ニューロンにおいて、脂肪酸結合蛋白質が欠損すると、GABAの過剰産生が起き、さらにGABAの主要合成酵素であるGAD1遺伝子の発現が上昇し、プロモーター領域のエピゲノム修飾が変化することが明らかになった(J Neurosci 2018)。2)アストロサイトにおいて、脂肪酸結合蛋白質が欠損すると、脂質滴の数が低下し、さまざまな外的ストレスに対する脆弱性が高まることが明らかになった(Mol Neurobiol 2018)。3)グリア系腫瘍細胞において、脂肪酸代謝の変化が腫瘍細胞の増殖や浸潤などの生物学的活性に影響をもたらす可能性を示す知見を得ることができた。具体的には、細胞内脂質代謝の変化によって、核内のアセチルCoA含量が変化し、それに伴って複数の遺伝子プロモーター上のヒストンアセチル化修飾が変化することが判明した。4)ミエリン関連タンパク質のペプチド投与によって誘導したマウス脊髄脱髄疾患モデルを用いた解析では、脱髄過程および再髄鞘化のプロセスに、アストロサイトで脂肪酸結合蛋白質の発現が一過性に上昇し、アストロサイトの脂肪酸代謝が変化することが分かった。さらに、脂肪酸結合蛋白質の遺伝子ノックアウトマウスの解析では、脱髄の進行や再髄鞘化の経過が大きく変化することが明らかになった(Neurosci 2019).現在、上記1)~4)について、エピゲノム変化と脂質代謝の関連メカニズムについての解明を目指している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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