研究課題
本研究では、キネシン頭部の運動活性の in vitro 計測とマウス培養神経細胞および線虫 C. elegans を用いた in vivo 計測を組み合わせることで、「1つの細胞内に多種類のキネシンが発現する必要があるのは何故か?」という問いにアプローチする。まず、キネシンの in vivo での運動特性を定量的に計測・解析するための方法論として、非平衡統計物理学の揺らぎの定理を用いた計測法を開発し、これを神経細胞に応用し、細胞内でのキネシンの力学測定が実現された。また、レーザー走査型共焦点顕微鏡の光学系を利用した多点相関FCS法を開発し、キネシン分子の2量体化でホモ2量体が選択的に形成されるのか、またキネシン全長分子を用いて、小胞に結合して輸送している(されている)状態と細胞質中を自由拡散する状態の定量化に成功した。これらの技術を用いて、kinesin-1とkinesin-3のキメラ分子について、in vitroおよび培養細胞においては、分子モーターとしての単体の運動活性およびカーゴとの結合・解離・輸送については、それぞれ頭部モータードメインおよび尾部ドメインの性質を反映した予想通りの挙動を示すことが確認された。しかし、線虫個体レベルでは致死となり、キメラ分子は、線虫個体レベルでは機能しないことが示された。この結果から、本研究計画の作業仮説である「頭部モータードメインと尾部ドメインが共進化している」が強く支持された。さらに、kinesin-1の中で、進化的に離れた異種動物の間でのアミノ酸配列比較と、それに基づく点変異導入を系統的に行い、運動の力学特性の異なるkinesin-1の構築に成功し、これを培養神経細胞に導入すると軸索輸送の速度が変化することが確認された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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