RNAiは線虫に限らず、ヒト培養細胞でもsiRNAの投与によって遺伝子機能阻害で頻繁に使われている必須技術である。また、近年は核酸医薬の基本的な手法としても広く認められている。RNAiに必須な酵素群や細胞内RNA結合タンパク質はかなり解明されたが、細胞内に取り込まれた二本鎖RNAが細胞内でどのような経路を辿って機能を発揮するか、どのような経路を辿って分解代謝されるのかについてはほとんど知見がない。本研究はその解明の根本的な因子を発見するに至っている。今後、核酸医療の最適化に有用な情報となると期待される。 線虫の全身性RNAiに関わる分子の同定とその分子細胞生理学的なメカニズムの解明を行うことを目的としている。我々はRSD-3というタンパク質が全身性RNAiに必要な分子の変異体の表現型を抑圧することからzipタイプの亜鉛トランスポーターを見出した。線虫の28個の遺伝子ファミリーの他の分子の変異体では類似表現型は見られなかった。一方、ヒトホモログのcDNAを線虫プロモーターで発現させると変異体の表現型への抑圧効果が見られてことから分子特異的かつ機能保存性がある。 全身性RNAiに関わる新規遺伝子のスクリーニングを行った。変異導入後、致死表現型を呈するRNAiクローンに耐性の個体を分離した。次世代シーケンサーにて全ゲノム配列決定を行い、RNAi不全遺伝子を探した。小分子Gタンパク質の制御分子の1つと、線虫に特異的な新規分子1つを見出した。
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