研究課題/領域番号 |
16H05126
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
白井 幹康 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任研究員 (70162758)
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研究分担者 |
川口 章 東海大学, 医学部, 教授 (30195052)
土持 裕胤 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (60379948)
中岡 良和 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (90393214)
Pearson James 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (30261390)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生理学 / 循環器・高血圧 / 肺高血圧症 / マクロファージ / 肺交感神経 |
研究実績の概要 |
睡眠時無呼吸症候群では、継続的な低酸素ではなく、間歇的低酸素(IH)に暴露されることが病態の根幹をなすといわれている。申請者らは、最近、IH負荷ラットでは、血中カテコラミン濃度の慢性的な増大に伴い、肺M1マクロファージのβ3アドレナリン受容体(AR)を介した一酸化窒素(NO)放出機構が誘導されるため、急性低酸素負荷で起こるHPVが強く抑制されることを見出した。そこで、28年度は、課題1)IH負荷ラットで新たに見出された肺M1マクロファージβ3ARを介したHPV抑制機構は、急性低酸素負時の肺交感神経性活動増大で作動・活性化するのか、課題2)IHによる肺へのβ3AR高発現M1マクロファージの分化誘導に肺交感神経活動はどの程度関与するのかを調べることを目的とした。 課題1を明らかにするため、星状神経節から分岐する神経束で、肺支配の特異性が高い神経束を分離・切除後、遠心端を電気刺激し、β3ARを介した肺血管拡張が起こるかを調べた。その結果、この刺激法では肺交感神経の選択的な刺激になっておらず、他臓器、特に心臓への影響は無視できないことが判明した。また、課題2を研究するため、予定した実験法である肺移植による肺の完全除神経を評価した結果、除神経は完全ではあるが、手術に伴う炎症反応による肺のマクロファージ発現の変化が長期に持続し、対照との比較が困難であることが判明した。 以上から、肺交感神経活動の選択的な効果を明らかにするには、実験法そのものを見直す必要があると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究実績の概要に述べたように、肺交感神経活動の特異的効果を調べるため、1年間かけて予定した実験法で色々な角度から研究を進めてきたが、最終的に予定した実験法では目的が達成できないとの結論に達した。そのため、28年度の研究計画を予定通りに進めることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
28年度の実験結果を踏まえ、29年度は新たな実験法で研究を進めることにした。 まず、肺移植による肺全体の肺交感神経の除神経の代わりに、肺葉単位の除神経を試みる。下肺葉を養う肺葉動脈の全周を外科的に剥離後、10%フェノールを塗布する。 もう一つの試みは、アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子導入により、交感神経に特異的なタンパク質遺伝子のsilencingあるいはactivationを引き起こし、交感神経シグナルを特異的に調節するものである。この方法は、国立循環器病研究センター・循環動態制御部の神谷厚範氏によって既に開発されており、腎臓や心臓への応用は成功している。他臓器と異なり、肺へのベクター導入法は特別な検討が必要と考えられ、現時点では吸入法を予定している。肺への応用が成功すれば、28年度にわかった実験上の問題点の解決につながり、肺交感神経の特異的役割の解明が進むと考える。
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