研究課題
骨形成を担う骨芽細胞は骨恒常性維持に必須である。また骨芽細胞は、ニッチ細胞として造血幹細胞や血液細胞の機能調節にも関与することが知られているが、その分子機構についは明確になっていない。これまでに研究により、骨芽細胞特異的なMechanistic target of rapamycin complex-1(mTORC1)活性化マウスを用いた解析から、骨芽細胞のmTORシグナルが「造血幹細胞の自己複製能、同幹細胞からの細胞分化」あるいは「分化した血液細胞の機能」の調節に関与していることを明らかにした。さらにin vitro解析から、mTORC1下流に存在し、血液細胞の機能調節に関わる骨芽細胞由来液性因子の同定に成功した。本年度は、病態生理学的条件下におけるニッチ細胞のmTORC1活性の重要性を明らかとするため、骨芽細胞特異的mTORC1活性化マウスを用いて、白血病モデルマウスを作製し、白血病病態の評価を行った。その結果、mTORC1不活性化白血病モデルマウスでは、野生型白血病モデルマウスと比較して、生存率の著明な短縮が確認され、骨髄における白血病細胞の増加が確認された。さらにmTORC1不活性化白血病モデルマウスで認められた表現型に、前年度に同定したmTORC1下流の骨芽細胞由来液性因子が関与するかどうかを明らかにするために、液性因子の受容体をノックダウンした白血病細胞を用いてmTORC1不活性化白血病モデルマウスを作製した。その結果、mTORC1不活性化白血病モデルマウスで認められる白血病の進展が著明に抑制された。以上の結果から、骨芽細胞のmTORC1シグナルは通常造血とともに白血病の進展にも重要な役割を果たす可能性が示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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