研究課題/領域番号 |
16H05132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
古屋敷 智之 神戸大学, 医学研究科, 教授 (20362478)
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研究分担者 |
北岡 志保 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00545246)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬理学 / 神経科学 / ストレス / うつ病 / 前頭前皮質 |
研究実績の概要 |
ストレスはうつ状態など情動変化を誘導し精神疾患を促す。研究代表者らはマウス社会挫折ストレスを用い、単回ストレスがドパミン受容体を介して内側前頭前皮質(mPFC)神経細胞の樹状突起やスパインを造成しストレス抵抗性を増強すること、反復ストレスが自然免疫分子を介してmPFCのミクログリアを活性化しmPFC神経細胞の樹状突起萎縮や情動変化を促すことを見出した。すなわち単回ストレスと反復ストレスでは脳機能への影響が異なり、両者を区別した研究が重要である。本研究ではマウス社会挫折ストレスを用い、単回ストレスによるドパミン受容体を介したmPFC神経細胞の機能・形態的増強の機序と神経回路制御における役割、反復ストレスにおいて自然免疫分子を介して活性化されたmPFCミクログリアの作用機序、自然免疫分子リガンドとしてのダメージ関連分子の実体と放出機構を解明し、ストレスに着目した精神疾患創薬戦略を提言する。 本年度までに、単回ストレスによる樹状突起造成にはドパミンD1受容体が必須であるのに対し、反復ストレスによる樹状突起萎縮にはドパミンD1受容体が関与しないことを示し、単回ストレスによる樹状突起造成と反復ストレスによる樹状突起萎縮には別のメカニズムが関わることを示唆した(Shinohara et al. Molecular Psychiatry 2017)。並行して、網羅的遺伝子発現解析により、反復ストレスによりmPFCのミクログリアで自然免疫分子依存的に発現上昇する炎症性サイトカイン群を同定した。これらの中和抗体をmPFCに注入し、反復ストレスによる情動変容が阻害されることを示した。また、反復ストレスにより局在が変化するダメージ関連分子を見出した。中和抗体やリコンビナント蛋白の脳室内投与により、当該分子がストレス抵抗性を高める作用を持つことを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、単回ストレスによるドパミン受容体を介したmPFC神経細胞の機能・形態的増強の機序、反復ストレスにおいて自然免疫分子を介して活性化されたmPFCミクログリアの作用機序、自然免疫分子リガンドとしてのダメージ関連分子について新たな知見が得られている。また、単回ストレスと反復ストレスの作用の違いが明確になることで、ストレスに着目した精神疾患創薬に資する知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、反復ストレスにおけるmPFCの他のドパミン受容体の役割について、条件付け欠損マウスを作出して解析する。上記の自然免疫分子に関する投稿中の論文の改訂作業を進める。上記のストレス抵抗性を高めるダメージ関連分子の前脳興奮性神経細胞選択的な条件付け欠損マウスを作出し、反復ストレスによる情動変化や脳内変化への影響を調べる。また、mPFC組織の網羅的遺伝子発現解析を行い、反復ストレスにより発現変化するダメージ関連分子を探索し、中和抗体などを用いてストレス感受性制御への関与を調べる。ストレス感受性に関わるダメージ関連分子の発現・局在や反復ストレスによる変化をRT-PCRや組織学的手法で調べる。余力があれば、ダメージ関連分子の発現・局在が反復ストレスにより変化するメカニズムを検討する。
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