研究課題
LPA4のG12/13に由来する細胞内シグナルが引き起こす「PPΑRγに対する機能抑制」の機序を明らかにするために、以下の実験を行った。マウス白色脂肪組織由来のRNAを使って、「脂肪細胞の成熟(脂肪生成)に寄与する遺伝子の群」の発現レベルをRT-PCR法で解析したところ、通常食摂餌(Chow)及び高脂肪食摂餌(HFD)とも野生型マウスに比べLPA4-KOマウスの方が多くの遺伝子で発現レベルが有意に高かった。さらに、白色脂肪組織由来のタンパク質をウェスタンブロッティング法で解析したところ、Chow・HFD両食餌条件でKOマウスの方がPPΑRγの112番目のセリンのリン酸化レベルが有意に低下していることが明らかとなった。このリン酸化はPPΑRγの機能を抑制する働きのあることが過去に報告されているが、実際白色脂肪組織における「PPΑRγリン酸化によって発現制御を受ける遺伝子群」の発現レベルをRT-PCR法で解析すると、Chow・HFD両食餌条件でKOマウスの方が多くの遺伝子で発現レベルが有意に上昇していた。次に、脂肪細胞に分化させたマウス間葉系C3H10T1/2細胞をLPA4選択的に刺激したところ、KOマウスの結果と矛盾なく「脂肪細胞の成熟(脂肪生成)に寄与する遺伝子の群」及び「PPΑRγリン酸化によって発現制御を受ける遺伝子群」の多くで発現レベルの有意な低下が認められた。以上の結果から、LPA4シグナルが白色脂肪組織のリモデリングを抑制すること、そしてその機序としてLPA4シグナルによる脂肪生成プログラムの直接阻害という現象が部分的に寄与することを示唆された。
2: おおむね順調に進展している
実験系の確立は順調であり、研究課題の達成に支障を来す問題は生じていない。今年度以降は、実験を繰り返し論文発表に向けてデータを蓄積する予定である。
引き続き研究計画に沿って、LPA4に共役するG12/13に由来する細胞内シグナルが引き起こす「PPΑRγの機能抑制」「ミトコンドリアの生合成関連遺伝子の発現抑制」「アディポネクチン産生抑制」という3 つの抑制現象の相関関係を分子生物学的に明らかにする。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
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