研究課題
ストレス応答機構の1つであるp62-Keap1-Nrf2経路は、ある種のがんで恒常的に活性化されいる。現在までに我々は、Nrf2の標的遺伝子の発現亢進が、グルコースおよびグルタミンの代謝再編成を介して、がんの増殖と薬剤耐性に寄与することを明らかにしてきた。本年は、1. ゲノムワイドなsiRNAライブラリーを用いたスクリーニングにより得られたリン酸化p62の制御因子の解析を進めるとともに、2. リン酸化p62とKeap1の結合阻害剤化合物の誘導体開発との検証、さらに、3 . リン酸化p62を指標とするオートファジー活性の評価システムの構築に取り組んだ。具体的には、1の課題に関しては、異なる配列のsiRNAによる2次スクリーニングを実施するとともに、生化学的解析によりリン酸化p62のレベルを調査し、対象となる候補遺伝子のうち偽陽性の削減を進めている。とりわけ、特定のキナーゼに関してはその阻害剤などの効果を細胞レベルで見るとともに、オートファジー活性に与える影響についても検証を進めている。2の課題に関しては、新たな誘導体を開発し、細胞レベルでの検証を行ったところ、溶解度と代謝安定性の高い化合物を見出している。3に関しては、様々な培養ヒト細胞株に対し、p62の変異体を複数作成するとともに、オートファジーによるリン酸化p62の代謝回転について調査を行っている。1~3の研究成果を統合することで、リン酸化p62の病態生理的役割とその制御メカニズムを明らかにすることができると考えている。
3: やや遅れている
siRNAライブラリーを用いたスクリーニングでは、1次スクリーニングの結果に多くの偽陽性が含まれていることが判明した。スクリーニングシステムの修正が必要と考えている。一方、リン酸化p62とKeap1の結合阻害剤としてK67の構造改変体として、K67の弱点であった溶解度が大幅に改善された化合物が得られており、新規抗がん剤の開発に向けて順調に進捗している。
スクリーニングの偽陽性に対応するため、スクリーニングにおいて異なる細胞株の使用を検討している。さらにこれまでの結果は、リン酸化p62のオートファジーによる特異的代謝の分子機構を明らかにすることが肝要であることを示唆している。現在のところ、様々な細胞株でリン酸化p62の分解を調査し、リン酸化p62が恒常的オートファジーで選択的に分解されることをことを見出している。変異体を用いた解析を通して、オートファゴソームがリン酸化p62を認識するメカニズムを分子レベルで明らかにできるはずである。以上の解析から得られる結果は、本研究課題の目的であるリン酸化p62の制御因子の同定にも直接繋がる重要課題と位置づけている。
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