研究課題
我々はコンドロイチン硫酸(CS)とその受容体PTPRσ、LAR(Type IIa受容体型チロシンフォスファターゼPTPRに属する)の下流でオートファジー中断が誘起されることをはじめて示した。オートファジー中断はautophagosome蓄積を招き、それが軸索先端の特殊なボール様形状dystrophic endballを導き、軸索再生阻害につながることを見出した。そこで、本研究では、この中でブラックボックスとなっている最も重要な課題「受容体型チロシンフォスファターゼの細胞内シグナリング」を解明することを目的としている。本研究は、PTPRとオートファジーの関連について直接エビデンスを示す意味で重要であり、また、オートファジーの神経変性疾患などへの関与を考え合わせると、多様な分野へ影響を与える基盤的研究となる。本研究費を得て、PTPRσ基質同定のため、網羅的解析を行った。これはPTPRσの活性中心のアスパラギン酸の一つをアラニンに置換したもので、酵素活性は減弱しているものの、基質結合能を保持した変異体で、安定した基質複合体の形成と取得を意図したものである。この変異体を使用し、沈降実験と質量分析計を用いた網羅的基質同定を行った。しかしながら、いくつかの候補は得られたものの期待どおりの成果とはならなかった。一方、アクチン結合タンパク質コータクチンがPTPRσの基質となることを再構成実験および細胞レベルで証明した。コータクチンはオートファジーの中で、オートファゴゾームとリソゾームの融合に関わるという報告があった。実際に軸索先端でこの過程に重要な働きをすることも見出した。
2: おおむね順調に進展している
PTPRσ基質同定のため、網羅的解析を行った。しかしながら、いくつかの候補は得られたものの期待どおりの成果とはならなかった。一方、アクチン結合タンパク質コータクチンの421番目のチロシン残基はSrcでリン酸化を受け、PTPRσで脱リン酸化を受けることが分かった。コータクチンはオートファジーの中で、オートファゴゾームとリソゾームの融合に関わるとされてきたが、実際にコータクチンをノックダウンするとこの融合のステップでオートファジーが中断することも分かった。
PTPRσの基質コータクチンが糖鎖コンドロイチン硫酸の軸索再生阻害にどのように重要かを明らかにしたい。つまり、コンドロイチン硫酸・PTPRσ・コータクチン・オートファジー・dystrophic endball形成の軸がvitalであるか否かを明らかにする。また、これまでうまくいっていなかったPTPRσ基質の網羅的探索についてもProximity-dependent biotin identification (BioID)を用いて引き続き挑戦する。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 備考 (1件)
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