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2016 年度 実績報告書

弾性線維の形成と再生の分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 16H05145
研究機関関西医科大学

研究代表者

中邨 智之  関西医科大学, 医学部, 教授 (20362527)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード細胞外マトリックス
研究実績の概要

弾性線維は、伸び縮みする組織(皮膚・動脈・肺など)に多くあって、その伸縮性を担う細胞外マトリックスである。皮膚のたるみだけでなく、心疾患予後悪化因子である動脈中膜硬化、高齢者の主要疾患である肺気腫も弾性線維の劣化・断裂が直接原因と考えられているため、弾性線維の劣化予防と再生は高齢化社会における極めて重要な課題である。しかし弾性線維のターンオーバーは極めて遅く、弾性線維の再生は困難と考えられてきた。
弾性線維形成には(1)ミクロフィブリルという線維の束が形成され、(2)エラスチンタンパク質がミクロフィブリルに沈着し、(3)エラスチンどうしが架橋される、というプロセスがある。我々はこれまでの研究で、それぞれのプロセスに必須のタンパク質があることを明らかにしてきた。本研究では、それらの生体内での働きを明らかにし、弾性線維の形成と維持、再生の分子機構を解明することにより弾性線維再生技術の基盤を作る。
本年度は、ミクロフィブリル形成について新たな発見があった。これまでLTBP-2という分泌タンパク質が毛様小帯(ミクロフィブリルのみでできている)の形成に必須であることを報告してきたが、Ltbp2 KOマウスは眼以外に表現型がなく、肺や動脈などにおける弾性線維の形成不全も認めなかった。我々はLtbp2/4ダブルKOマウスを作成し、このマウスが激しい肺胞破壊(肺気腫)のため早期に死亡すること、肺気腫は弾性線維形成不全によるものであることを見出した。またLTBP-4の異所性強制発現がLtbp2 KOマウスの毛様小帯形成不全をレスキューできることもわかり、LTBP-2とLTBP-4がミクロフィブリル形成において重複する役割を持つことが考えられた。この新知見はScientific Reports誌に報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

LTBP-2 (Latent TGFβ-binding protein 2)の遺伝子欠損マウスは毛様小帯(ミクロフィブリルのみでできている)の線維束が形成されず水晶体脱臼をおこした。しかしLTBP-2は肺や動脈にも多く発現する分子であるにもかかわらず、これらの組織ではミクロフィブリルの形成に異常は無いため、別の因子、特に他のLTBPファミリー分子が代償している可能性が高い。LTBPファミリーのタンパク質は4つある。肺・大動脈ではすべてのLTBPが発現しているが、毛様体ではLTBP-4以外のLTBPが発現している。従って、LTBP-1, 3はLTBP-2の欠損を代償することはできず、LTBP-4にはLTBP-2を代償する機能がある可能性がある。
この仮説をLtbp2/4ダブルKOマウス、Ltbp2 KO/Ltbp4 KIマウスを作成し組織を解析することにより証明した。

今後の研究の推進方策

エラスチン、コラーゲンなどは分子どうしの非共有結合だけでは必要な弾性や強度を生み出すことができず、分子どうしが共有結合で架橋される必要がある。架橋を行うのはLysyl Oxidaseという酵素であるが、この酵素活性にFibulin-4という分泌タンパク質が必須であることを見出した(未発表)。その分子機構を明らかにすることに注力する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] Latent TGF-β binding protein 2 and 4 have essential overlapping functions in microfibril development.2017

    • 著者名/発表者名
      Fujikawa Y, Yoshida H, Inoue T, Ohbayashi T, Noda K, von Melchner H, Iwasaka T, Shiojima I, Akama TO, Nakamura T
    • 雑誌名

      Sci Rep

      巻: 7 ページ: 43714

    • DOI

      10.1038/srep43714

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Novel magnetic indenter for rheological analysis of thin biological sheet for regenerative medicine.2016

    • 著者名/発表者名
      Kageshima M, Maruyama T, Akama T, Nakamura T
    • 雑誌名

      Rev Sci Instrum

      巻: 87 ページ: 074302

    • DOI

      10.1063/1.4959268

    • 査読あり
  • [学会発表] Latent TGFβ-binding protein 2 is essential for the stable structure of ciliary zonule microfibrils.2016

    • 著者名/発表者名
      中邨智之
    • 学会等名
      ISER2016 (XXII Biennial Meeting of the International Society for Eye Research)
    • 発表場所
      京王プラザホテル(東京)
    • 年月日
      2016-09-25 – 2016-09-29
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Molecular mechanism of elastic fiber assembly.2016

    • 著者名/発表者名
      中邨智之
    • 学会等名
      The 17th Annual Meeting of Society for Photoaging Research
    • 発表場所
      神戸臨床研究情報センター(神戸)
    • 年月日
      2016-08-20 – 2016-08-20
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ミクロフィブリルと弾性線維の形成機構2016

    • 著者名/発表者名
      中邨智之
    • 学会等名
      第48回日本結合組織学会学術大会
    • 発表場所
      長崎大学(長崎)
    • 年月日
      2016-06-24 – 2016-06-25
    • 招待講演
  • [学会発表] 弾性線維の形成と再生の分子機構 ~弾性線維と皮膚疾患の関わり~2016

    • 著者名/発表者名
      中邨智之
    • 学会等名
      第115回日本皮膚科学会総会
    • 発表場所
      京都国際会館(京都)
    • 年月日
      2016-06-03 – 2016-06-05
    • 招待講演
  • [学会発表] 毛様小帯ミクロフィブリルの形成におけるLTBP-2の役割2016

    • 著者名/発表者名
      中邨智之
    • 学会等名
      第120回 日本眼科学会総会
    • 発表場所
      仙台国際センター(仙台)
    • 年月日
      2016-04-07 – 2016-04-10
    • 招待講演

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公開日: 2018-01-16  

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