研究実績の概要 |
低分子量GTP結合蛋白質Ralはがんや代謝等において重要な働きをしていることが明らかにされてきた。Ralの抑制性活性制御因子RalGAPは長らく不明であったが、我々は世界に先駆けて、分子同定し、報告した(JBC, 2009)。作成したRalGAP KOマウスの組織中ではRalの活性が数倍に上昇しており、生存可能な系等があり、有効に利用しつつ研究を進めている。新規Ral結合蛋白質として、DBC1を見出し、本年度は、この結合のDBC1の活性に与える影響について解析を重ねた。RalGAPは活性サブユニットα1あるいはα2と共通のβサブユニットとのヘテロ複合体として機能する。βサブユニットコンディショナルKOマウスを導入し、繁殖した。このマウスを用いることで、組織特異的にRalGAP活性を完全にゼロにすることが可能であり、本年度は、今後膵癌と口腔内癌に焦点を当てることを決め、準備を進めた。さらに、すでに保有しているRalGAP α2KOマウスで、DSS実験腸炎をマウスに導入し、急性炎症への影響を解析し、RalおよびRalGAPが免疫制御にも重要な働きをしていることを見出した。さらに、Ralは細胞内栄養感知の重要因子であるmTORを間接的に制御することが示されているが、本年度は、mTOR系およびオートファジー制御の研究を進めた。さらに、悪性度の高い膀胱がんでRalGAPα2サブユニットの発現低下が生じていることを報告した(Oncogene, 2013)が、その一端がエピジェネティック制御であることを見出しており、その解析を進めた。
|