研究課題
ヒトは一日あたりその体重に相当する重さのATPの合成と分解を行っており、ATPとATPaseは、生物(細胞)の活動に なくてはならないものである。可溶性ATPaseの中で最も豊富に存在するVCPと呼ばれるATPaseは、細胞に必須の蛋白質であるが、その詳細な機能はよく解っていない。我々は、このVCPのATPase活性を特異的に阻害する化合物KUSを開発してきた。このKUSを作用させた細胞では、低グルコースや血清除去さらにはミトコンドリアの呼吸鎖の阻害剤処理に対して抵抗性を示し、ATPの減少が抑制されることを見いだし、VCPのATPase活性を抑制することが、ATPの有効な節約法であることを示してきた。 このような背景の本、本研究では、細胞自身がVCPのATPase活性を抑制して、ATPの恒常性を調節するメカニズムが存在する可能性の検証とKUSを用いた疾患モデルへの介入実験を行い、平成30年度は、以下の点を明らかにした。1.HEK細胞を脂質飢餓状態にするとVCPが繊維状の構造体(以下、VCP fiber)に変化することでATPの消費が抑制されることを観察していたが、このVCP fiberを介して、細胞間でATPのやり取りが行われていることを見いだした。2.PC3など幾つかの癌細胞をアミノ酸飢餓状態にするとVCPが細胞内でドット状の構造体に変化することを観察していたが、このドット状の構造体を作ることで、細胞は、アミノ酸の飢餓による細胞死を回避していることを見いだした。3.これまでに、心筋梗塞のモデルにおいてKUSの投与によって、梗塞部位の体積の有意な減少がおこることを観察していたが、この時、心筋でのATPレベルが維持され、心拍出量も保持されることを確認した。4.さらに、脳梗塞のモデルにおいても、KUSの投与によって、梗塞部位の体積の有意な減少がおこることが観察された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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