研究課題
昨年に引き続き、ヒトCLP1変異をもつ橋小脳低形成患者より見出された異常RNA断片の疾患発症機構についてゼブラフィッシュモデルを用いて検証を行なった。これまで報告された3種類のRNA断片のうち、チロシンtRNA前駆体の5’エクソン断片に細胞毒性があることを確証した。細胞毒性についての分子メカニズムを明らかにするため、RNA結合タンパク質の探索を行った。質量分析器を用いたDARTS法を独自に改変して生化学的に探索を行ったところ、PKM2を発見した。さらに、PKM2をゼブラフィッシュ胚に過剰に発現させて病的RNA断片を注入したところ、ほぼ完全に病態が回復した。この結果より、チロシンtRNA前駆体の5’エクソン断片はPKM2に結合してその機能を阻害するために神経細胞死が生じることが示唆された。CLP1と同様にRNAリン酸化活性を持つと報告されているNOL9に関し、そのキナーゼ活性欠損ノックインマウスを作成し解析を進めていたが、明らかな表現型は認めなかった。詳細にNOL9の分子機構について解析してみたところ、既報に反してマウスおよびヒトのNOL9には明らかなRNAリン酸化活性を認めなかった。少なくともマウスおよびヒトにおいては、CLP1が唯一のRNAキナーゼであり、RNA代謝やsiRNAの効率に関与している可能性が示唆された。CLP1と同様に遺伝子変異により橋小脳低形成を発症するexosome複合体の構成分子EXOSC2、EXOSC8と、VRK1分子の遺伝子ノックアウトゼブラフィッシュを作成し、解析を進めた。EXOSC2、EXOSC8とも小頭症を示し、ハッチ後10日程度で死亡した。また早老症を示した。その病態メカニズムを解析したところ、ヌクレオチドプールバランスの不均衡が生じていることが判明した。VRK1においても小頭症および異常行動が生じ、現在詳細な解析をすすめている。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Heliyon
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