研究課題/領域番号 |
16H05155
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
植村 明嘉 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30373278)
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研究分担者 |
福嶋 葉子 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70647031)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペリサイト / 血液網膜関門 / 炎症 / マクロファージ / 線維化 |
研究実績の概要 |
出生直後から血管発生が開始するマウス網膜では、内皮細胞が分泌する血小板由来増殖因子(PDGF)Bが、PDGF受容体beta(PDGFRbeta)を発現するペリサイトの増殖・遊走を促進する。我々は、新生仔マウスに抗PDGFRbeta抗体を投与するとことにより、網膜血管壁へのペリサイト集積を阻害し、糖尿病網膜症と同様の血管異常を再現できることを報告している(Uemura et al. J Clin Invest. 2002)。さらに網膜血管発生過程におけるペリサイト消失は、成体に至るまで改善せず、バリア破綻と炎症を遷延させることを明らかにしてきた(Ogura et al. JCI Insight. 2017)。また、網膜浮腫や網膜剥離の発生に伴って、線維化が進行することを確認している(論文投稿準備中)。平成29年度は、こうしたペリサイト消失網膜症モデルマウスにて、急性炎症から慢性炎症への移行過程における細胞・分子プロファイリングの解析を進めた。とくに、qRT-PCR法による炎症および血管新生に関連する遺伝子の発現解析、フローサイトメトリー法と免疫組織化学染色法による血球表面マーカーの発現解析、共焦点蛍光顕微鏡および2光子蛍光顕微鏡を用いた生体マウス網膜イメージング解析などを融合することにより、マクロファージが不可逆的バリア破綻と線維化の進行に深く関与することが明らかとなった。また、こうした過程ではSDF1-CXCR4シグナルが重要なはたらきをもつことが、連携研究者の村田らとの共同研究により明らかとなった(論文投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、ペリサイト消失網膜の急性・慢性炎症においてマクロファージの動態を制御するシグナル分子の解析を進める。まずは、フローサイトメトリー法により生体マウス網膜から精製したマクロファージを用いてRNAseq解析を行い、分泌型および膜型シグナル分子を同定する。次に、クロファージ由来分子の発現局在を免疫組織化学染色法およびin situ hybridization法により確認する。さらに、これらのシグナル分子のリコンビナント蛋白質や阻害剤(抗体・低分子化合物など)をペリサイト消失網膜症モデルマウスの眼内に投与し、血管壁バリア機能や炎症の改善効果を検証する。こうした解析をもとに、糖尿病網膜症治療における新規創薬標的分子の探索を進めていく。
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