研究課題/領域番号 |
16H05156
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
西村 智 自治医科大学, 医学部, 教授 (80456136)
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研究分担者 |
瀬尾 欣也 自治医科大学, 医学部, 講師 (40747698)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体イメージング / 二光子顕微鏡 / 共焦点顕微鏡 |
研究実績の概要 |
現在、西村らは生体レベルでのミクロとマクロをカバーするイメージングモダリティを開発している。特に、病態形成のように非常に長時間かかり、空間的にも広い視野でおきる生活習慣病に対しては、超解像技術を導入した改良型二光子顕微鏡および、広光路共焦点イメージングロボットを開発した。網膜のような生体深部でも明瞭に可視化が行えるようになり、新生児未熟血管の血管新生・血管退縮を観察している。一方、高画素CMOSセンサーでは血栓イベントの最初期の同定(内皮傷害)と最終的なイベント転帰のリンクを可視化観察している。今後はロボティクス、制御工学、情報工学との連携をはかり、得られた画像データへの解析フローも検討していく。その際、イベントの先頭にある好中球、あるいは、慢性化した病変での線維芽細胞への光制御による特異的治療を目指す予定である。また、手持ち可能なデバイスなど、実際の医療現場へ応用も考慮している。本システムは特許申請を完了した。 なお、生体での細胞動態をとらえた動画はそのわかりやすさとインパクトから、NHKスペシャル「細胞」をはじめとしたマスメディアでの科学健康番組にもしばしば使われており、現在も次期番組への取材協力をおこなっており一般国民への科学啓蒙に貢献している(記者会見も予定)。また、初等教育にも積極的にかかわり、昨年度でも小学生から高校生まで、実演をまじえた出張授業・研究室公開を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
西村は、循環器内科医としての臨床経験を元に、生体イメージングによる生活習慣病の基礎病態研究をすすめている。個体全体をみつつ、特定の一細胞レベルの解析を行うためには、顕微鏡レンズ特有の開口数・視野角制限を外す必要がある。西村は、文字通り独自に部品から顕微鏡システムを開発しており、オリジナルの光路設計で明瞭な生体画像を撮影している。実時間で変動していく生体材料に対して、ロボット制御、光化学反応による細胞操作、フェムト秒による組織改変といった双方向性を高めているが、同様の研究は例をみない。 さらに、昨年度だけでも、50を超える講演・発表をおこなうなど積極的な学会活動をおこなうとともに、CRDS・8K応用研究会・未来創造事業・赤外ワークショップをはじめ複数の政策への提言をおこなっている。また、複数のシステム開発を独自にしており、昨年度だけでもマクロミクロ結像システムについて単独特許申請、また、攪拌培養デバイスを筆頭申請者として共同出願している。最近では、4K/8K CMOSセンサーを用いて広視野と高解像度を両立しており、画像技術への医療転用をはかっている。手持ちサイズでも運用できる4K内視鏡については、外科処置支援をアプリケーションとして考え、実用化・産業化にむけて事業化もすすめている。
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今後の研究の推進方策 |
目で見えないものを新たに可視化する、全く新しい展開として赤外線領域に焦点をあてる。InGaAsカメラ(近赤外線)、ボロメーター(遠赤外線)、あるいは、分光技術を応用し、物質特異的な生体イメージングを目指す。さらに、赤外線イメージングを手術室でおこないスマート医療への応用を検討する。 同時にAI技術を用いた生体画像の解析をおこなう。生命現象の記録を広いスケール(時空間・波長に加えて形態・機能情報といった多次元を含む)で記録し、さらにその細胞の歴史を逆行していけば、記録のなかでまがりかどまで生体をさかのぼれる。もし、こういった逆行解析のなかで、心血管イベントの上流・頂点にある細胞や分子摂動が明らかになれば、新たなアプローチがうまれるからである。そのため、みるべき対象を最初にきめるのではなく、網羅的なイメージングを計っている。AIベースの画像認識を用いて、細胞種の自動判別をおこなうなど、ビッグ画像データへのバックアップをおこなう。
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