研究課題/領域番号 |
16H05161
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北澤 荘平 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (90186239)
|
研究分担者 |
北澤 理子 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (00273780)
原口 竜摩 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (00423690)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 腫瘍 / メチル化 / 遺伝子発現 / 腫瘍関連遺伝子 |
研究実績の概要 |
CpA, CpT, CpCなどCpG非選択的な、あるいはCpG-island領域外のシトシンメチル化等、いわゆる「非定型的DNAメチル化」は、ES細胞やiPS細胞における幹細胞性の維持、酸化的ストレス下の遺伝子発現制御に重要であることが明らかにされつつある。本研究課題では、申請者らが開発した塩基配列特異的なin situメチル化シトシン検出法を駆使し、病理組織形態変化に基づく塩基配列レベルでの包括的エピジェネティクス研究行い、これまでほとんど解析がなされていない「透析腎や糖尿病などの高酸化的ストレス状態に続発する腫瘍」の発生、腫瘍幹細胞性の維持や進展過程において、非定型的DNAメチル化の存在様式およびその経時的変化について解明することを目的としている。特に腫瘍発生早期の病変に着目し、酸化的ストレスに続発する腫瘍の新たな早期診断法と治療戦略の基盤を確立することを目指して研究を遂行している。 申請者らは、形態や機能単位として選別された細胞集団では、これまで重要視されてこなかった非CpG-island領域のメチル化シトシンおよび非 CpG (CpA, CpT, CpC)のメチル化 (非定型的メチル化)が、腫瘍の発生や進展、さらには細胞分化、組織再生にも重要な役割を有する可能性を見い出し、世界に先駆けて報告し、最近の包括的エピゲノミクス研究でも、この非定型的メチル化は、iPS細胞の多分化能を規定し、幹細胞維持に重要であることが最近示された。 本申請課題では、この非定型的メチル化シトシンがどのように腫瘍発生、腫瘍幹細胞維持に関わっているのかについて、培養細胞や試験管内の基礎的な検討から、病理組織検体を用いた臨床的な検討まで包括的に研究している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化的ストレスに続発する腫瘍、腫瘍前駆病変におけるCpG非選択的シトシンメチル化の検討、病理組織標本上で、形態学的特徴に基づいた塩基単位でメチル化シトシンの検出について、研究体制は、北澤荘平 (愛媛大学)が統括し、愛媛大学連携研究者との基礎研究 (北澤理子、原口竜摩)、臨床研究 (安川正貴教授、研究助言者)を愛媛大学チームとして遂行している。培養細胞を中心とした転写制御の基礎研究は、北澤理子が遂行している。技術的な助言は、慶応大学教授金井弥栄先生 (研究助言者)より適時受け、腎臓癌、前立腺腫瘍の臨床病態に関する検討は、武中 篤教授 (鳥取大学研究協力者)、国際疫学研究は、ミャンマー医学研究所のSann Sanda Khin博士を研究協力者として遂行している。Sodium Bisulfiteにて、非メチル化シトシンは、ウラシルに変換され、塩基解読ではチミンとして認識され、メチル化シトシンはシトシンとして残る性質を利用して塩基単位で解析する方法を発展させ、申請者らは、10個程の細胞からなる微小切片をアガロースビーズに封じた状態でSodium Bisulfite処理やPCR反応に供する実験系を確立した。通常、メチル化状態の簡便な検出法としてメチル化特異的PCR法 (MSP法)が用いられるが、MSP法では、非CpG-island領域や非CpGにおける非定型的メチル化シトシンの検出は不可能である。また、CpG-islandを選別配置したマイクロアレイでも、検出が不可能である。従って、この申請課題での検討では、一旦PCR産物をプラスミドにクローニングし、最低10個の独立したクローンで塩基単位での決定を行っている。申請者等は、愛媛大学でのハイスループットの次世代シークエンスシステムを用いて、PCRからメチル化シトシンの検定・含有率をクローニングせずに、直接、定量的に評価するシステムを導入中であり、包括的な資料解析に向けてシステムを構築している。
|
今後の研究の推進方策 |
CIMP判定に必要な代表的的遺伝子群に加え、申請者らが解析してきたBAMBI遺伝子プロモータ領域のメチル化解析を行う。BAMBI遺伝子プロモータには通常のCpG-islandとTATA-box近傍のCpGの両者を有しているため、MSP法とsodium bisulfite mapping法を併用して解析を進める。検索対象として、申請者らの教室で過去に蓄積してきた日本国内の病理組織検体とミャンマーの新ヤンゴン総合病院の検体を用いる。臨床的背景を含めた検討は、申請者らと共同研究を行ってきた鳥取大学泌尿器科学の武中篤先生を中心に行う。現在までの予検討の段階では、BMP-TGF-βシグナルが細胞増殖に有利な前立腺腫瘍では、BMP-TGF-βシグナルを遮断するBAMB発現は低く、CIMP型腫瘍ではBAMBIのプロモータ領域も同時にメチル化を受けている。一方、大腸腫瘍ではBMP-TGF-βシグナルが増殖抑制的に作用し、CIMP型であってもBAMBIのプロモータ領域にメチル化は認めない症例が殆どであった。当該年度では、統計学的に検定可能な数の症例解析を進めるとともに、培養細胞を用いて、BAMBI遺伝子発現と前立腺腫瘍増殖の関連についてのin vitroでの検討を追加して、BAMBIのエピジェネティクス制御機構をより詳細に解析する。病理学教室に保管・蓄積されてきた生検や手術時の病理組織検体で、明らかな腫瘍部分と非腫瘍部分とに区分し、BAMBIの免疫組織化学を併用し、microdissection法にて細胞を選択的に回収し、メチル化シトシンの分布状況について、塩基単位でBAMBI遺伝子上流領域を中心に検討する。
|